北本市史 資料編 現代
第2章 北本の農業
第3節 大宮台地の農業用水計画
67 昭和二十四(一九四九)年 荒川左岸用排水改良に関する請願書(『中山道筋土地改良関係書類』)
請願書
荒川左岸用排水改良事業について謹んで請願申上げます。当地域は北足立郡の中央部にありまして、東は東北本線、西は荒川に接し、南は浦和市、北は鴻巣市に及ぶ一団地であり、北足立郡大宮市外一八個(箇カ)町村(大宮・与野・土合・大久保・植水・馬宮・指扇・平方・大谷・大石・上尾・上平・伊奈・加納・桶川・川田谷・石戸・中丸・原市)に関係する起状の多い耕地約壱万弐千五百町歩を擁する区域 であります。
本地区の水田は約参千六百町歩でありますが、属(俗カ)に謂ふ谷津田でありまして確たる用水源がなく大部分は天水によって辛うじて植付をする現状であります。然しながら一度大雨に際しては附近の高台部より悪水が流下して収穫皆無を来すことも珍らしくないのであります。
又最近開拓事業の進展に伴って保有林の減少は急激な出水となって畑地の浸水又は滞水による被害は益々拡大の傾向にありまして、これ等の被害或(い脱カ)は減産収量は年々米四万五千石、麦六万石及び甘藷壱千五百万貫に達するものと見込まれて居り、誠に重大なる寒(関カ)心事であると存じます。
本地域の改良事業は往時より屢々計画されて来ましたが、地形の広大なるに加へ地形の複雑なること及び用水源の困難さから地元民の熱望にも関らず再三実現の不能に陥いったのであります。県は本計画が用水源の解決にあることを重点として調査を進められたる結果、利根川の余剰水利用を以て大いに可能性を高めたのであります。農林省に於ては昭和二十二年度より国営農業水利調査に採択され、県と共同のもとに組織的な総合調査を遂げられ、真に理想的な用排水の完壁を期すべく改良計画をたてられ実施設計も近く完成されるものと承ります。ついては県並に県会に於てはこの実状を充分御賢察の上、本改良事業が国営事業として採択施行されます様総(あらカ)ゆる御配慮を下されたく謹んで請願致します。
昭和二十四年 月 日
大宮市長(後略)