北本市史 民俗編 民俗編一覧
第4章 職人と技術
第1節 日常生活と職人
6 オケヤ(桶屋)
昭和三十年代の後半、合成樹脂の急速な開発によって衰退を余儀なくされた職人にカゴヤがあるが、オケヤも同様にそのあおりを受けて仕事がなくなった職業の一つであった。図8 タル底とオケ底
タル(樽)とオケ(桶)のちがいは、底板のヘリのとり方が違う。タルは杉板のマサメ(征目)で作り、竹タガで締めて水もれがないように心がけて作ったものであるが、オケと違って乾燥に弱かった。オケはサワラ材を使ったもので、アカ(銅)のクミタガや、バンドタガで締めているが、昔はみな竹のタガであった。タルやオケ作りはタガのかけ方が大切で、これを掛けることをシメカガリといった。タガのシメカガリは、伏せた品物の底部から上部へとタガを締めていく。この時のタガにする竹は上が厚く、下が薄くけずられており、これをシメギで平均的に締めていく。
写真8 道具
(宮内 星野勝衛氏宅)
写真9 道具
図9 竹タガのけずり方
図10 風呂オケと木どり
図11 オケヤの道具
カタ
オケ作りで重要なのは、オケやタルの丸みをつけるため、板を組み合わせる時の勾配をつける、板で作った道具である。これは直径五寸(一五センチ)のオケを作る時のカタから、三分〜五分おきに型どりをするカタがあって大きなものは三尺(九〇センチ)物の型どりをするカタまであるので、都合二〇本以上のものが用意してある。このカタは、それぞれのオケ職人が自分で作るもので、決まった形はないが、勾配を決める曲線と、曲がりを合わせる直線だけは均一である。
カンナ
外側の仕上げをする凹型の外マル、内側の仕上げをする凸型の丸ガンナの二種類が用いられるが、大きさによって、何丁かのものがある。また、合わせ目の面を削る平カンナは、一メートル以上もある安定したショウジキ(正直)台にすえてもちい、それぞれ、二枚カンナが使われた。また、平カンナは、その台の傷みを防いだり、すべりをよくするために、つぼ状のものに布を入れて、これにゴマ油をしみこませたものをその面に塗る工夫もされている。
シメギ(締め木)
タガを締める道具のことをシメギ(締め木)という。これは長さ一〇センチに幅四センチほどの長方形のものからオケの大きさに合わせて大小あり、堅い木をもちいて作る。シメギはオケの丸みに合わせて凸型をしており、タガにあたる部分には丈夫な金物が打ちつけてあるものもある。
写真10 桶屋タガ
写真11 ノコ
写真12 カタ