実録まちづくりにかける集団

北本この人 >> 実録まちづくりにかける集団

第2編 「わぁ、つくしんぼみたい、わたしのおうち」
   あそびの学校が歩んだ十三年

六 自分で考え創り出すこと(遊びの学校実践活動から)

スチロールトレーで飛行機を作る
最近では、食料品を購入すると、たいていのものがスチロールトレーに載せられており、毎日の家庭ごみとして排出される量は、増加の一途をたどっている。遊びの学校では、この家庭ごみをそのまま捨てるのではなく、一度子供たちの学習教材として利用することを提案した。
さまざまある家庭ごみの中から、スチロールトレーと、割り箸を取り上げ、飛行機を作ることにした。スチロールトレーは大変多くのサイズがある。あれだけあるにもかかわらず、同じ物をそろえるのに苦労する。
飛行機作りには、秋刀魚のような、長い魚を乗せるトレーが適している。三〇㎝以上もあるトレーがあり、翼を切り出すには適している。底の平らな部分を二枚使って、主翼・尾翼・垂直尾翼を切り出す。
設計図を各自に配布し、それを見ながら切り出すよう指示する。小学生にとって何も書かれていない平面に、設計図と同じものを書き出すことは大変な困難であった。まず、中心を出すということが、なかなか理解できない。直角に線を引くことに四苦八苦している。したがって、翼に角度をつけて切り出すとなると、またまた大変なことであり、どうしていいか分からなくなる子供もいた。そこで、二分の一、三分の一という大きさはどのくらいか、中心というのはどういうことか、定規の使い方や読み方はどうするのか、といったような算数の基礎から解説することになる。
スチロールの切り出しについては、ナイフの使い方や定規の当て方を指導する。リーダーはあっちで指導し、こっちで説明しと、大変な忙しさである。リーダー一人あたり四~五人を見なければならない。
続いて、割り箸に翼を取り付ける。今度は重心という大事な用語だが、この意味もなかなか難しい。
「真中でつりあう地点が重心」、といっても言葉では何の事がわからない。先に作っておいた見本を見せながら、一つ一つ説明していく。
「主翼・尾翼・垂直尾翼を、胴体(割り箸)に対して直角に取り付け、左右が対象でなければ飛行機は飛ばない。」
という意味を、わかりやすく説明するのは至難の技であった。胴体の先端に金属クリップの重りをつけて、主翼とのバランスを取らせなければ、飛行機が飛んでくれない。リーダーたちは、それぞれ見本機を持ちながら根気強く指導していく。
二時間ほどで、どうにか全員の飛行機は出来上がった。次に、割り箸に輪ゴムを取り付けた発射機を作って完成である。待ちきれない子供たちを制して、全員が出来上がるのを確認する。
いよいよグランドに出て飛行実験だ。重り用のクリップに、ゴムを引っ掛けて飛ばす。まっすぐ数十メートルも飛ばす子。目の前で墜落してしまう子。左右のどちらかに大きく曲がってしまう子。一人一人の飛行状況から、翼の曲がりや重心の位置の調整などを指導していく。
飛ばし始めて、一時間近くなっても子供たちは一向にやめようとしない。自分で作ったものが、空を飛ぶことのすばらしさ・うれしさに時間を忘れている。大成功だった。子供たちにとっては、「飛行機はなぜ飛ぶか」という理論より、実際に目の前で飛ぶことのほうがよほど重要なことである。喜びの中から学ぶ体験が、やがて彼らが成長し成人してから、人間形成に大きな意義を持ってくるものと思う。

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