北本市の埋蔵文化財
宮岡氷川神社前遺跡発掘調査報告
早川智明 吉川国男 石井幸雄
岩井住男 土肥 孝
5.遺物
土製品
護符様土版(第20図8、図版25-6)本品は、第一地点Aトレンチ第3区から出土したもので、長さは7.0㎝、幅は2.6㎝、厚さは7㎜を計る。淡褐色の隅丸の長方形をして、刻文のある面を凸にして反っている。両端には孔が穿たれているが、片端はちょうど孔のところで欠損している。表面には、何匹ものヒルが這っているかのように三叉状の沈線が入組んで刻まれている。裏面は無文で指圧痕を浅くとどめている。全体として出来ばえは幼稚で、反り方も一定していない。形もやや不恰好である。
本例の如き類品については、筆者はその出土例をあまり知らない。用途については、紐を通す孔が両端にあるところから垂飾品とも考えられないことはないが、反り方が額にあててみると、びったりと合うところから孔に紐を通して額につけ、頭のうしろで紐を結んで使っていた蓋然性がつよい。したがって、護符または信仰呪術品、もしくは認識標として供せられたものであろう。 (吉川国男)
第20図 土製品実測図