北本市の埋蔵文化財

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宮岡氷川神社前遺跡発掘調査報告

早川智明 吉川国男 石井幸雄
岩井住男 土肥 孝

5.遺物

 石器

本遺跡から発掘調査によって得られた石器は、全部で62点を数える。これらをまとめたものが、第2表である。
石器の種類別点数は、礫器1、打製石斧9、磨製石斧3、たたき石2、乳棒状石器1、すり石5、石皿2、掻器1、石鏃21、尖頭器5、石錘2、石棒1、石剣2、砥石1、垂飾品2、その他4、である。これらは、礫器1が無土器時代ないしは繩文早期に属すると思われるほかは、すべて繩文後・晩期の石器であろう。
数量的に最も多いのは石鏃であって、尖頭器5点を加えると飛び道具が26点を数え、全石器の46%を占めている。このことは、生業が狩猟に相当ウエイトをおいていたことを提示するものとして把えてよいだろう。なお、ここで尖頭器については説明を加えておく必要がある。尖頭器とは名称が適切でないかもしれないが、用途としては槍先に填装した飛び道具と考えるのが、いちばん自然であるように感じられるので、そう言ったまでのことである。とは言え、本遺跡の尖頭器は(図版31の1~5)幅広で肉厚な形態を有し、見るからに「ずんぐり」としている。果たして実用に供し得たかどうか疑わしいものもあるし、また製作途中の破損品とみられるようなのもある。これらの尖頭器の「ずんぐり」形の原因は、製作方法にあるようだ。その未製品(同図版31の6~8)を詳細に調べてみると合点がいく。すなわち、上横二面にプラットホームをもつ石核から先ず横長のフレイクを剥ぐ。フレイクの片側には石核時のプラットホーム面が厚くなっており、つぎにここに打撃を加えてバルブを剥ぎ取り鋭利な側辺を形成させるという手法である。このような尖頭器の形態や製作技法は、本遺跡の特色であることに注目するとともに、今後他遺跡の尖頭器についてもじゅうぶん注意を要する問題である。
打製石斧の形態は、短冊形(第21図2・3・4・6)、揆形(同図7)、分銅形(同図8)であり、これらは小形と中形に分けられることができる。ここでいう小形とは、長さ8㎝以下のものと指すとすれば、第21図2・4などがこれに該当する。そのほか打製石斧で特徴的なことといえば、揆形では基部寄りに着装のためのくびれをもたせていること、分銅形では逆にこのくびれが浅くなっていることである。
打製石斧が第一地点からより多く発見されているのに対して、すり石は第2地点からの出土が圧倒的に多い。すり石の石材は、かたい石英閃緑岩や花崗岩などからつくられている。形態は、長楕円形、隅丸長方形を呈しており、側辺にも磨り面をもっているのが多い。第21図9には、表裏ともに穴が彫られている。これは堅い実をつぶす道具が発火棒のおさえ石かもしれない。すり石の5点は、石鏃、打斧についで第3位で、数量的に多いことも注目する必要があろう。第21図5は、すり石とたたき石を兼ねたすり石である。
第22図1の砥石は、玉類や磨製石斧を研磨したものであろう。同図5も正確にはわからないが、砥石に類するものであろう。同図6は、ぼろぼろ崩れやすい砂岩製で、周囲が削り減っている。利器としてよりは信仰的な用途を考えた方がよいかもしれない。
石器の石材供給地は、大部分が荒川水系に求められる。利根川水系の石材は安山岩系統のものであり、他は、硬玉が越後または秩父、黒燿石は透明度が高いので信州産と思われる。圧倒的に多い荒川水系の石材でも、変成岩類は秩父地方から運ばれたのではないかと思われる。このように石材の供給地から、当遺跡居住者の交易、行動圏の一端がうかがえる。
第2表 宮岡氷川神社前遺跡出土の石器一覧表
図・番号石器名長さ
mm

mm
厚さ
mm
石質出土地
地点、位置、層位
第21図 1礫器876436硬質砂岩2、B6、Ⅲ
    2打製石斧683917砂岩1、A9、Ⅲ
    3打製石斧734525粘板岩2、D7、Ⅳ
    4打製石斧762912角閃安山岩1、A3、Ⅲ
    5乳棒状石器1133020ホルンフェルス2、A5、Ⅲ
    6打製石斧102+α4717ホルンフェルス1、炉、
    7打製石斧1235414ホルンフェルス1、表採、
    8打製石斧1066629角閃安山岩1、A3、Ⅲ
    9すり石825340石英閃緑岩2、C7、Ⅳ
    10すり石877360花崗岩2、C6、Ⅲ
    11すり石1207144石英閃緑岩2、F2、溝内
図版 12すり石1169043石英粗面岩2、D7、Ⅲ
    10すり石1057042石英閃緑岩1、A7、Ⅲ
第22図 1砥石153+α13654砂岩1、B、Ⅲ
    2石皿67+α10650安山岩2、D6、Ⅲ
    3打製石斧1246515緑泥片岩2、D2、Ⅱ
    4たたき石1565630ホルンフェルス1、B、Ⅲ
    5不詳78+α6712砂岩2、F2、Ⅲ
    6不詳838123砂岩2、H6、Ⅲ
    7打製石斧131499+α絹雲母片岩2、F7、
    8不詳104+α68+α12+α緑泥片岩2、E6~D7、Ⅲ
第22図 9石棒79+α3316+α砂岩2、A6、Ⅰ
未載たたき石138+α6435砂岩1、
未載打製石斧955021絹雲母片岩1、A2、Ⅱ
第23図 1石鏃25124チャート1、A1、Ⅱ
    2石鏃2213+α3黒曜石2、D4、Ⅲ
    3石鏃29125粘板岩2、F3、Ⅲ
    4石鏃22163チャート2、E5、Ⅲ
    5石鏃23123ホルンフェルス2、E3、Ⅲ
    6石鏃16+α153チャート2、H2、Ⅲ
    7石鏃2714+α5チャート2、A7、Ⅲ
    8石鏃22+α125チャート2、F3、Ⅱ
    9石鏃26+α143硅岩2、表採
    10石鏃19+α123チャート2、E5、Ⅳ
    11石鏃22+α13+α5チャート2、F5、Ⅲ
    12石鏃27+α13+α4粘板岩2、表採
    13石鏃21+α17+α6チャート3、表採
    14石鏃23+α15+α4チャート2、F6、Ⅲ
    15石鏃41+α13+α5硅岩2、E3、Ⅲ
    16石鏃31+α117硅質泥嘆願2、G2、溝内
    17石鏃27125黒曜石1、A6、Ⅲ
    18石鏃3796チャート2、D2、Ⅲ
    19石鏃31123硅石1、A6、Ⅲ
    20石鏃32+α96チャート2、E6、Ⅲ
    21石鏃32127ホルンフェルス2、D6、Ⅲ
    22石鏃432416泥炭岩1、B、Ⅲ
    23石鏃563714砂岩1、A4、Ⅲ
    24磨製石斧452211蛇紋岩1、A4、Ⅲ
    25磨製石斧46217凝灰岩2、D6、Ⅰ
    26磨製石斧32+α2912蛇紋岩1、A4、Ⅲ
    27石剣28+α3418砂岩1、A4、Ⅲ
第4図 1垂飾品34184粘板岩2、F8、Ⅱ
    2垂飾品14119硬玉2、G1、Ⅱ
図版31 1尖頭器462913チャート2、F4、Ⅲ
    2尖頭器39289チャート2、F6、Ⅲ
    3尖頭器34+α3015チャート1、A2、Ⅱ
    4尖頭器29+α3514チャート2、F7、Ⅲ
    5尖頭器27+α248チャート2、A6、Ⅱ
    11掻器33219チャート2、E5、Ⅲ

第21図 石器実測図(1)

第22図 石器実測図(2)

第23図 石器実測図(3)

第24図 垂飾品実測図(実物大)

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