北本のむかしといま Ⅵ 首都近郊圏として
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Ⅵ首都近郊圏として
1 戦後の諸改革と北本
戦後自治の発足と村政昭和二十年(一九四五)八月十五日、日本は連合国のポツダム宣言を受け入れ、無条件降伏した。日中戦争から太平洋戦争へと拡大した戦争は、日本の敗北をもって終わった。九月、ポツダム宣言に基づき連合国軍が日本に進駐(しんちゅう)した。占領政策の立案実施は最高司令官マッカーサー元帥(げんすい)以下、米軍のスタッフが中核となって行ったので、実際は米国の単独占領であった。これから七年近くの間、日本は占領軍(連合国軍最高司令部=GHQ)の支配下におかれた。占領軍の要求に基づいて日本政府が実施するという統治(とうち)のやりかただった。この間に戦後日本の諸改革や民主化が急激に進められていった。
地方行政のあり方も大きく変わった。それまでは、中央の内務省が行政と警察の権限をもち、各都道府県・市町村を監督するというものだった(中央政府に権限を集中するから、これを中央集権制という)。GHQの考えた民主化は、これとは逆で、もっと地方自治体に権限を分け与えようというものだった(これを地方分権制という)。つまり、これまでの中央集権制を地方分権制に改め、市町村長などを住民の選挙で選び、議会の力を強化して、地方自治を実現しようというものだった。この考えにそって、昭和二十一年の「町村制の一部を改正する法律」では、市町村長を住民の投票によって選ぶ公選制、青年男女の完全普通選挙制などが定められた。それらは、翌二十二年五月に日本国憲法とともに定められた地方自治法に受け継がれ、まとめられた。これによって、国が地方自治体の全体を監督(かんとく)する従来の権限は否定され、地方自治制度が完成した。
北本宿村の村政改革は、「町村制の一部を改正する法律」に基づいて昭和二十一年から始まった。しかし、多くの農村部がそうであったように、北本宿村も上からの改革に従うという受身の傾向が強かった。村会の議長・副議長を議員の投票で選ぶということでさえ、当時の北本宿村では、驚きをもって迎えられたのである。翌二十二年四月には、公選による初めての村長選挙が行われ、木村卯之吉(うのきち)が当選した。これにつづいて、地方自治法に基づいた改革が行われた。その特徴は、第一に村会の機能が強化されたこと、第二に教育委員会などの行政委員会がつくられたこと、第三にそれまで国や県で扱っていた社会保障や衛生に関する事務が市町村に移ったことなどである。
こうして、戦後の北本宿村の村政は動き始めたが、まだ難問が控(ひか)えていた。村の財政問題である。財政は、やさしくいえば村の収入(歳入)と支出(歳出)のことである。戦後の混乱から激しいインフレーション(物価が持続的に上昇する状態)が起こり、物価は昭和二十〜二十一年の一年間に六倍、二十二年には二〇倍にまではね上がった。それに伴って、村でも人件費などの支出が増えた。そこで各自治体とも、さまざまなものに税金をかけて、歳入を増やそうとした。北本宿村でも、自転車・荷車・牛や馬、さらに扇風機・犬・ミシンなどにまで税金をかけ、必死に財政の建て直しを行った。
表21 戦後混乱期における北本宿村の独立税目と課税標準
(単位:円、広告税の一部は料金に対する割合)
税目 | 課税標準 改正年月日 | 昭和21 12.12 | 昭和22 4.1 | 昭和22 10.1 | 昭和23 11.5 |
---|---|---|---|---|---|
自転車税 | 普通自転車1輛 | 9 | 48 | 60 | 180 |
荷台自転車1輛 | 5.4 | 36 | 78 | 300 | |
荷車税 | 荷台車1台 | 48 | 180 | ||
牛馬者1台 | 30 | 180 | 180 | 540 | |
荷積牽引車1台 | 30 | 30 | 90 | 270 | |
荷積車1台 | 48 | 120 | |||
荷積小車1台 | 5.4 | 5.4 | 30 | 30 | |
金庫税 | 外法0.3立方米まで1個 | 15 | 15 | 72 | 240 |
外法0.3立方米を増す毎に | 1.8 | 1.8 | 9 | 24 | |
畜産税 | 牛 1頭 | 240 | |||
馬 1頭 | 200 | ||||
扇風機税 | 1台 | 60 | 60 | ||
犬 税 | 1頭 | 24 | 24 | 120 | 120 |
広告税 | 交通機関による広告料金 | 30/100 | 30/100 | ||
入場券による広告料金 | 30/100 | 30/100 | |||
立看板等による広告1個 | 5 | 15 | |||
建・蛔反等による広告]個 | 30 | 96 | |||
電柱等による広告1件 | 50 | 30 | |||
そ の 他1件 | 30 | 100 | |||
接客人税 | 芸 者1人 | 150 | |||
ダンサー1人 | 75 | ||||
そ の 他1人 | 35 | ||||
使用人税 | 1人 | 300 | |||
余裕住宅税 | 10 畳以 内1畳 | 15 | |||
10 畳以 上1畳 | 5 | ||||
ミシン税 | (除営業用)1台 | 240 |
注1 昭和23.1.22,昭和24.10.14にも、若干の改定が行われたが省略した。
2 各年度途中の改正税率は、いずれも年度当初にさかのぼって実施されている。
3 自動車税のうち、人の運搬船用の荷台自動車には別途に税率が規定されているが省略した。また接客人税・使用人税は月額である。

写真142 昭和25年に新築された北本宿村役場
(昭和34年ごろ)