北本のむかしばなし 伝説や昔話

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うめられてしまった石の仁王様におうさま

むかし、石で作られた大きな仁王様におうさまがありました。
ある日、その仁王様を石戸の方から運ぶことになり、牛車うしぐるまに乗せて出発しました。ちょうど、無量寿院むりょうじゅいんの前まで来たときのことです。なぜか牛車は止まってしまい、少しも動かなくなってしまいました。近くに住む村びとたちもたくさん手伝てつだいに来ましたが、牛車はびくともしません。「きっと、仁王様がここから動きたくないのだろう。」人びとはそう考え、牛車から仁王様をおろすと、その近くにたてておきました。
そのころのお百姓ひゃくしょうさんたちは、牛や馬をい、野良のら仕事などに使っていました。毎日無量寿院の前を通って野良に行っていましたから、朝晩あさばん、牛や馬を引いて、仁王様の前を通ることになりました。
一ゕ月ほどたったころのことです。お百姓さんたちがとても大切にしていた牛や馬が、立てつづけにいなくなってしまったのです。村中がおおさわぎになりました。ある者は、ぬすまれたのかもしれないと言い、ある者は、かみかくしにあったのかもしれない、などと話していました。原因げんいんはさっぱりわかりません。とうとう、村びとたちは、「これはきっと仁王様におうさまが牛や馬を食べてしまったのにちがいない。」と考え、みんなで大きなあなをほって、仁王様をうめてしまいました。それからというものは、牛や馬がいつの間にか消えてしまうということはなくなり、もとのしずかな村になったということです。
その後、石の仁王様を見た者はだれひとりいません。しかし、土地の人たちは、今でも石の仁王様は土の中にうめられている、とかたくしんじているそうです。

(1)仁王様ほとけを守るかみで、寺の門の両わきにおかれるいっついの金剛力士像こんごうりきしぞう
(2)牛車………牛に引かせる木製もくせいの荷車。北本では、昭和二十年代まで収穫物しゅうかくぶつを運ぶ時などに使われた。
(3)野良仕事………田や畑での仕事。
(4)神かくし………子どもなどが行方不明ゆくえふめいになること。むかしは、これを天狗てんぐや山のかみのしわざと考えた。

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