北本のむかしばなし くらしをつたえる話

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盆様ぼんさま

八月は盆月ぼんづきです。盆にはなくなった人たちが、仏様ほとけさま(お盆様)になってそれぞれの家に帰ってくると考えられています。仏様をむかえるために、家ではいろいろなじゅんびをします。
八月一日は、かまの口あけといって、地獄じごく極楽ごくらくのかまの口があき、仏様があの世を出発する日です。その仏様がうちに着くのは十三日の夕方で、この日までに、どこのうちでもおはかをそうじし、家では盆棚ぼんだなをかざります。
盆棚は、十三日の午前中に、ぶつだんの前や、ざしきにかざります。たるや、カイコの台をならべ、その上に戸板を乗せて作るうちや、組み立て式のたなのうちなどいろいろです。盆棚の四すみには、葉のついた青竹を立て、 マコモのなわをはり、ホオズキを下げます。じゅんびができるとぶつだんから先祖せんぞのいはいを盆棚にうつし、トウモロコシ、スイカ、花などをそなえます。また、無縁仏むえんぼとけといって、まつってくれる人のいない仏様ほとけさまのためにも、盆棚ぼんだなの下にマコモのござやサトイモの葉をしいておきます。
八月十三日の夕方、家族そろっておはかまで仏様をむかえに行きます。おはかに着くと、持ってきたちょうちんをすぼめ、「さあ、おむかえにまいりました。どうぞこの中にお入りください」といってろうそくに火をつけ、仏様を乗せてうちまでおつれします。家の入口には、仏様の足のすすぎ水を出しておき、それでちょうちんの下を少しぬらします。「どうぞお入りください。」といいながら、えんがわからうちに入り、盆棚のろうそくにちょうちんの火をうつします。「ごくろうさまでした。長い旅でのどもかわいておいででしょう。」 と、水やお茶をそなえます。
盆棚の上の仏様と盆棚の下の無縁仏には、毎日三食ぼたもちやうどん、だんご、白いごはん、あずきごはん、きゅうりもみ、カボチャの煮物にものなどのごちそうをそなえます。すこし前までは、白いごはんやうどんは毎日食べられるものではなく、とくべつの日や、お客様がみえたときに作るごちそうだったのです。

八月十四日は、野回りです。盆棚のろうそくの火をちょうちんにうつして仏様を自分のうちの田畑に案内して、「ここの畑は今年 はとてもいいできです。」などと、説明せつめいして回ります。
八月十五日は、仏様がまたあの世へ帰る日です。昼にうどんを打ち、 盆棚にかけておきます。このうどん は仏様がみやげをせおっていく荷なわだといいます。夕方、盆棚ぼんだなの火をちょうちんにうつし、「おそまつさまでした。お送りいたします。」と言って、ナスとキュウリで作った馬と、みやげのうどんやだんごや花を持っておはかまで行きます。おはかでちょうちんの火を消し、うちへ帰ります。
十六日の朝には盆棚をかたづけ、もう一度おはかまいりをしてお盆は終わリます。盆中いそがしくはたらいた女の人は、この日は一日ゆっくり休みます。このごろでは、盆の終わりの二日続きのおはかまいりを、一回ですませる家が多くなっています。また地域ちいき宗派しゅうはによって、盆の終わりが一日ずれていることもあります。

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