中山道と本宿
東京が
江戸とよばれた時代には、毎年決まった時期に
参勤交代で
中山道を
大名行列が行き
来しました。一番大きな大名である
加賀百万石のお
殿様をはじめ、
上野国前橋藩(
群馬県)のお殿様、行田の
忍のお殿様など大小数十の大名が中山道を通りました。
江戸幕府は、全国を
支配するため、江戸の日本橋を出発点として、五つの大切な道を整えました。中山道はその一つで、げんざいの国道一号線である東海道についで大切な道でした。ほかに
奥州街道、日光
道中、
甲州道中があり、これらを合わせて五街道といいます。大名たちは主にこの五街道を通って江戸と
藩の間を行き来していました。
北本駅東口近くを通っていた中山道は、大正のころまで、江戸時代のようすをよくのこしていたそうです。
道はばは九
尺(やく二・七メートル)ほどで、両がわが小高くなっていました。その上には
松の木が植えられ、
並木になっていました。その外がわは、水はけがよいように、くぼみになっていました。そのくぼみから少しはなれて農家がたっていました。松並木は昼間でもうす暗いほどうっそうとしげっていて、しばしば、追いはぎが出たと言います。
深井あたりの
中山道は、道はばがたいへん広くなっています。これは
大名行列 が鴻巣の
宿場に入るとき、馬を止めて、
隊形を組み直すために広くしたとも、あるいは大名
同士がすれちがうさいのよけはばか、休み場であったともつたえられています。
なお、道すじは今日の中山道と少しちがっていたようです。
多聞寺の
交差点 からげんざいの道をはなれて、すぐ左ななめに入り、北本
農協、
埼玉銀行 の前をすぎ、ふみ切りへと向かいます。このふみ切りからしばらくはほぼJR
高崎線と重なっていたようです。
小田急マンションをすぎてまもなく、
一里塚 が左手にのこされています。これは
江戸日本橋から一里ごとに、旅人の目じるしとしてつくられたものです。ここをすぎてしばらくして右にカーブし、深井の広い場所に出たようです。
大名行列などが通るとき
以外は、商人も
農民も中山道を自由に行き
来しました。北本は、桶川や鴻巣のように宿場にはなっていませんでしたので、
街道ぞいに
旅館や店がならび
町並みをつくることはありませんでした。旅人は次の
桶川宿や
鴻巣宿をめざし通りすぎていきました。けれども、旅人や馬を引いて荷物
運送の仕事をしている人たちが休む
立場がありました。立場は、本宿村の
下茶屋、東間村の
三軒茶屋と、二か所ありました。
また、中山道ぞいの農家には
縁台の上に
冷たい水を入れたおけや、わらじなどがおいてありました。旅人は、その水でのどをうるおし、いたんだわらじをはきかえ、いくらかのお金をおき、また次の宿場をめざして歩きつづけました。これは、けっこうよいみいりになったといいます。
注
(1)参勤交代………
大名のつまや子どもを
江戸に住まわせ、大名は一年間は江戸に出て
将軍につかえ、つぎの一年間は自分の国もと(
領地)でくらすという
幕府のきまり。
(2)加賀百万石………
加賀前田藩は一〇三万
石の
大名であり、
徳川将軍に次ぐ
石高をほこっていた。加賀はげんざいの
石川県南部にあった国名である。
(3)藩………一万石以上の領地をもつ
武士を
大名といい、大名の
領地や
支配のしくみ を
藩という。
(4)宿場………旅人をとめたり、荷物の運ぱんのための人や馬を用意するせつびのあるところ。
(5)一里塚………土をもりエノキをよく植えた。旅人のやすらぎや目じるしのため、
街道 の両がわに
一里 (やく四キロ) ごとにもうけられた
塚。
(6)縁台………木や竹などで作った、外におく細長い
腰 かけ。
江戸時代街道ぞいに多く見られた。
(7)みいり………
収入のこと