北本市史 通史編 原始

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第2章 豊かな自然と共に

第3節 台地の恵み

ドングリの林と食用植物
縄文時代を通じて大宮台地では、照葉樹林が形成されていた気配が無い。少なくとも中期以降は総じて現在のクリ―コナラ―クヌギの二次林に似た林であった。そうした環境ではどの様な食生活が可能であろうか。
中心はなんといってもドングリである。ドングリは成り年と不作の年とがあるが、何種類かドングリを組み合わせると毎年安定した量を採集することができ、味覚的にも淡泊(たんぱく)で主食に向いているのである。その他クリ・クルミ・卜チなどの堅果類(けんかるい)があるが、クリ・クルミ・シイは味覚上甘すぎて主食には向いていない。また、クリ・クルミ・シイの実はそのまま食することができるが、問題はドングリにはお茶などに多く含まれているタンニンが含まれていて、渋くてそのままでは食べられないことである。ことにトチの実が含んでいるサポニンやアロインは有毒であり、それらを抜く必要がある。タンニンをはじめサポニンなどの有毒物質は水晒(みずさら)しによって除くことができる。現在西日本の照葉樹林域では水晒しの技法を主体とし、東日本の落葉広葉樹林域では加熱処理法を主体として、水晒し法を併用していることが多い。市域は落葉広葉樹林域であり、縄文人たちは加熱法と水晒し法の併用によりアク抜きをしていたであろう。赤山陣屋跡は縄文時代の遺跡でもあったから、トチの実を水晒しした施設がみつかっている。トチは自然植生とあわず、栽培していた可能性が高い。
その他ユリ根、ヤマノイモなどは得られる熱量が大きく、効率のよい食料であり、クズ、カタクリなどデンプンも貴重な食料源であった。

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