北本市史 資料編 自然

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第5章 北本の水

第2節 地下水

1 地下水の存在状況

不圧地下水(自由地下水)
北本市域では、古くから井戸水や湧水が利用されてきたにもかかわらず、不圧地下水に関する資料は極めて不足している。そこで、昭和六十年三月と七~八月の二回にわたり、北本市域における不圧地下水の存在とその利用状況などの調査を実施した。調査は民家の測水可能な浅井戸を対象に行なった。測定項目は、井戸の枠高、水位、総深、湛水深、さらに現場で簡単に測定し得ることができる水温、水質~水素イオン濃度(pH)、電気伝導度(EC)、塩素含有量(Cl)など~である。
また、市域の不圧地下水の経年的な水位変化を知る目的で、民家の家庭用井戸を借用して自記水位計を二か所に設置し、昭和六十年五月十一日以降から継続観測を行なっている。自記水位計の設置場所は次の通りである(図10)。
北本市石戸宿一七〇八  横田長次氏宅
北本市朝日四—五五  内田政之助氏宅

図10_1 不在地下水の測水地点(1985年3月)

図10_2 不在地下水の測水地点(1985年7・8月)

※図中のA-A’、B-B'は図12-2参照

これらの調査結果の一部は、表8、図10、図11、図12、図13、図14、図15に示すごとくである。

図11_1 不在地下水面等高線(1985年3月)

図11_2 不在地下水面等高線(1985年7・8月)

不圧地下水面は地形の高低に支配されて、地形面とほぼ類似した傾向がある。つまり、台地同様西には最も高い面があり、東には南北に走る中山道付近を尾根にしたやや高い面がある。
地下水面等高線に直角の方向が地下水の流動方向になることから、北本団地付近は、西・北・東方向から不圧地下水が集まってくることがわかる。


図12_1 地形地下水断面(1985.7.29~8.3測水)

図12_2 地形地下水断面(1985.7.29~8.3測水)

不圧地下水面はほぼ地形面と同様な形をとっている。また、荒川の河川水の海抜高度は地下水面よりはるかに低く、不圧地下水に直接関係していない。
断面位置は図10-2参照


図13 不在地下水の水位変化(1987年)

この図は2つの地点における1987年の降水と不圧地下水位の観測結果を示したもので、降水量は鴻巣観測所資料、地下水位の観測井地点は次の通りで、いずれも家庭用井戸として常時使用されている。
北本市朝日 4-55 内田政之助氏宅(標高16.4m)
北本市石戸宿 1,708 横田長次氏宅(標高28.6m)
地下水の主な涵養源は降水であるため、浅い地下水はこれに敏感に反応して変化する。降水の一部が浸透して地下水を涵養すると、当然不圧地下水位は上昇する。逆に降水の少ない場合には地下水位は低下する。したがって、水の多い梅雨期と台風期には地下水位が上昇する。

図14_1 地下水温と地下水位との関係(1985.3.8~3.12)

図14_2 地下水温と地下水位との関係(1985.7.29~8.3)

ある程度深い地下水の温度は、年変化が小さく、その場所の年平均気温におおよそ近い。3月の場合、ばらつきが大きいが、7・8月の場合、地下水位約4m以浅は夏の高い気温の影響を受けて、浅いほど高い傾向がある。約4m以深では深さに関係なく14℃台である。


図15_1 Cl値と電気伝導度との関係(1985.3.8~3.12)

図15_2 Cl値と電気伝導度との関係(1985.7.29~8.3)

水の中に電解質のものが融け込んでいると電気が通りやすく、電気伝導度の値が大きくなる(純水はむしろ電気を通さない)Cl(塩素イオン)はその一つであり、Cl値と電気伝導度とは正の相関関係にある。


北本市域における不圧地下水の存在状況を概観すると、大略地形の影響を受けていることが理解できる。すなわち、不圧地下水面の高さは地形の高度形態に支配されてほぼ類似した傾向をもつ。不圧地下水の流動方向もほぼ現地形の高い所から低い所へ向かって緩傾斜で流れている。地下水位は一般に市域西部の台地で深く、台地東部、縁辺部、開析谷にのぞむところおよび窪地で浅くなる。
また、荒川沿いの台地には顕著な開析谷の発達があり、谷頭あるいは谷壁斜面の一部に湧水が認められることから、台地と開析谷および荒川沿い低地とでは、地下水面が不連続関係にあることになる。
次に不圧地下水の水温について、浅井戸を利用して実施してきた地下水温(井戸の水温)の状況をみると、三月(冬~春季)の場合では大略一三~一五度C、七・八月(夏季)のそれでは大略一四~一六度Cの値を示している。三月と七・八月の水温を比較すると、夏季の時期の方が一度C前後高い傾向を示しており、不圧地下水の水温と地下水位とのあり方はよい関係にある(図14)。不圧地下水の水温は浅層に帯水することから、第一には大気中の気温の影響を受けて変化する。それ以外には井戸の構造、位置、深さ、湛水深などの状況によっても変化することが多い。
水素イオン濃度(pH)は大略六.九以下の微酸性の値を示している。PH値が酸性を示す素因として、表層地質が関東ローム層(火山灰層)により構成されていることに関係があり、一般に関東平野の台地地域にみられる傾向と類似する。
電気伝導度(EC)は三月の場合で一〇〇~四〇〇μS/cm、七・八月のそれで二〇〇~五〇〇μS/cmの範囲にある。塩素イオン濃度(C1) は三月と七・八月でそれぞれ一〇~八〇、三〇~一五〇mg/ℓの範囲にあり、電気伝導度および塩素イオン濃度の値は七・八月の場合の方が比較的高い値を示す傾向が認められる。

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