北本市史 民俗編 民俗編一覧
第11章 伝説・世間話・昔話・諺
第3節 昔話
14 みょうがを食べるとある人が、さる旅館に泊まったんですってね。そしたところが、みょうがを食えば物忘れが達者になる、と聞いた旅館の主人がね、「あのお客さんの鞄の中はどうもお金が大変入っていそうだ。あの鞄を忘れていけばいいな。」と。「みょうがをうんと御馳走すれば、さぞ忘れていくだろう。と思って朝のご飯も、おみょうつけも、おかずもみょうが。何から何まで野菜揚げでもみょうがでもってこしらえ、くれたんですってね。これじゃあ多分あの旅人が鞄を忘れていくにそういねえ、ひともうけだと思って喜んでいた。
ところが、あべこべに肝要な宿銭を払うのを忘れ、鞄そっくり持っていっちゃったそうだ。
▽話者・・・新井宇一郎さん(荒井明治三十六年生)