実録まちづくりにかける集団

北本この人 >> 実録まちづくりにかける集団

第2編 「わぁ、つくしんぼみたい、わたしのおうち」
   あそびの学校が歩んだ十三年

二 北本市青少年育成市民会議からあそびの学校へ

怖いけど優しいリーダーたち
事業の基本的考え方は、「学校で教えないこと、家庭で出来ないことを中心として、野外体験活動をとりこんだもので、リーダーがやって楽しいこと」としている。毎年の企画会議で、リーダーから色々な提案を受け(概ね二〇から三〇程度)、その中から大体一〇項目程度に絞り込んで、内容を見てテーマをつけるという形を取っている。
参加費用は、ひとり三〇〇円の傷害保険料のみとし、受講者から運営費を徴収することはしない。したがって、リーダーたちには運営に当たって、さまざまな工夫やアイディアが要求される。必要な道具についても、できるだけ、自分達で開発するよう努力をしている。また、本来消耗品とされているものでも、翌年以降にも使えるように考えている。
リーダーに対する費用弁償はなく、学習当日の昼食として「お握り二個と飲物」だけという粗末な状態であるが、十数年にわたる活動の中で、まだ不満の声は聞いていない。ひたすら楽しい事業を展開しているという喜びなのか、まことに気のいい連中であることは間違いない。「あそびの学校」は、文字通りあそびを通じて、社会の秩序や人間関係を学ぶと同時に、「むかしからの伝統的な遊びを学ぶこと」「ルールを守ること」「道具を使いこなすこと」「異年齢の中で学ぶこと」を主体として、自分で行動できる子供の育成を目指している。
今の子供たちは、親も含めて、他人から叱られた経験に乏しい。少子化が進み家庭の中でも、親の目が子供に届きすぎることもあって、何でも親が先回りしてしまう。遊びの学校の中でも、親子をいっしょにさせてしまうと、親は自分のことより、子供のことが気になって仕方がない。われわれリーダーは、極力自分の子供は無視するように注意をする。
「遊びの学校にきたら、自分の子供はいない、みんなの子供であると思え」を鉄則としている。危ないことをしている子供を見つければ、遠慮なくリーダーは叱り飛ばす。しかし、少々なことは敢えて見逃すようにし、極端に危険な場合や、他人に迷惑が及びそうなときだけ、大きな声を出す。行き届きすぎた子供への干渉が、自制心や他人を思う心をなくさせていると、われわれリーダーは考えている。
もちろん、いいことをしたときは、これも遠慮なく誉める。遊び時間は徹底して子供たちと遊ぶ。こうした「ケジメ」をつけることが、今の親には欠如している。自制心に欠ける子供は、すぐ「キレル」。「叱ること」と「怒ること」の区別がつかずに、子供と接しているから、子供は理由もわからず反抗することになる。いわゆる「キレル」のである。
遊びの学校になれてくると、子供たちは「怖いけど優しいリーダー」たちに、絶対の信頼をおき、非常に素直になってくる。
ここで、中心的なリーダーたちの横顔を紹介しておこう。
副実行委員長吉田勲。ボーイスカウト北本団副団委員長・団体職員。ナイフ・ナタの使い手。情報ネットワークが広く、材料調達の達人。
リーダー西條覚。元ボーイスカウト北本団ボーイ隊長・公務員。アウトドアのベテラン。子供たちに対して、妥協を許さない厳しさを持ちながら、遊びに引き込む能力は抜群。最も人気のあるリーダー。
野本勝美。会社員。竹工作の達人。温和だが粘り強く魚取りの名人でもある。
佐々木洋二。途中から参加の会社社長。アウトドアクッキングの達人。西條とコンビで、さまざまな料理に長けており、彼が手動式浄水器を持ち込んだことで、活動の範囲がずい分広がった。
峰尾信男。農業。こだわり農業を自負しており、有機野菜作りを得意とする。手打ちうどん・そば打ちは玄人はだし。粘り強さは群を抜いており、自分でも無人島体験ツアーを主催している。そばつくりプログラムは、彼がいなければできなかった。
諏訪清。会社員。ビデオ撮影のベテラン。温和だが意外と頑固なところがある。
清水副司。一級建築士。クラシック音楽好きだが、いろいろなものに興味を持って取り組む穏健派。
工藤剛。保険業。若いが研究熱心。テーマを与えると夢中で取り組む。子供たちにとってはお兄さん的存在。
以下、受講生からリーダーになったメンバー。
鈴木拓雄。税理士。野球好きだが研究熱心。
金田賢次。会社員。黙々と仕事をするタイプだが、段取りがうまい。
柳井柳太郎。公務員。心が広く何事にも動じないタイプ。明るい性格で研究熱心。
新井やよい。主婦。テニスが得意で明るい性格。
村田和子。主婦。新井とのコンビネーションがよく、ともに調理や買出しなどを担当。
柳町美枝子。公務員。新井・村田とともに三羽烏的存在。栄養学の知識が豊富。
西條浩史。学生。遊びの学校第一期修了生。西條覚の子。図体が大きい割には小回りが利く。肉体労働に最適。子供たちのお兄さん的役割。

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