からから揺れき 秩父嶺
秩父嶺
編笠百合
春の庭めぐりて朝の風はつか編笠百合の揺らぎやはらに
隣りあふ巻ひげ互ひにからめあひ編笠百合は花をまもりぬ
蠟梅のねもとに咲ける貝母(ばいも)百合絵心あらばと思ひて見つむ
咳止めの薬となれる植物と図鑑に知れり貝母のひとむら
貝母とも編笠百合とも呼ぶ花のうつむく姿を母は好みき
心決め盛りの牡丹二つ剪る春の嵐に折るるを案じ
徒長枝は剪られてもなほ息づきて抱へし束のほのかに温し
あまき香にひかれ戻れる藪のなか茶の木伝ひて忍冬(すひかづら)咲く
すひかづら花ひとつ摘み蜜吸ひぬ遠き日の味遠き日の友
棘避けつつ葉陰に小さき山椒の実を摘み居れば五月の風過ぐ
青山椒炊ける厨に廊下にも香は漂へり深く息吸ふ