からから揺れき 秩父嶺
秩父嶺
初孫
来し方の想ひ出ひとつひとつづつ繰りて母への供養となさむ
産声のか細き吾の生育の苦労話を聴きし杳き日
ひきつけの発作激しく背負はれて医者に行きたる記憶おぼろに
晴れ着きてうさぎの襟巻せし吾は母にすがりき秩父夜祭
わが家の蚕の絹にて仕立てたる帯解き衣装の袂重かり
入学式母手作りのワンピース刺繡の小花はとりどりに咲く
電灯の下に夜半まで編みくれしセーター真白きコンクールの朝
むらさきと緋色の祭り着山車にのるわれに小指で母紅さしき
初孫の小さき布団に布おむつ縫ひてはるばる母の持ち来し
孫三歳手作りゆかた着する母前に後ろにまはりて誉めつ
保育所の孫の行事に張りきりて着物姿の母が走りき