からから揺れき 秩父嶺
秩父嶺
十薬
庭隅の十薬ぬきて香の強き葉を揉み貼りてくれし母思(も)ふ
ほの暗き秩父の家の軒下に干し十薬はからから摇れき
埼玉県歌人会県知事賞
逝きてより無人となれる実家(さと)の庭母丹精のてつせんま盛る
梅捥げば幼きわれに「白加賀」と教へし父の声よみがへる
梅干しを母に習ひし思ひ出の木枡に量り梅を漬け終ふ
懐かしき顔も見えたり山車を曳く人さまざまに故郷(ふるさと)の春
「オーリャイ」の声勇ましく山車すすむ山間の町に露店のにほひ
祭礼の屋台歌舞伎の行灯に浮きたつ面輪の五郎十郎