からから揺れき 蝉しぐれ
蝉しぐれ
柚木の老木
大雪の予報にしばしためらへど紅濃きつぼみの薔薇を剪りとる
黄昏も雪降る林はほの白く細き枝先みな雪を持つ
記録的大雪となり映像は夫と旅せる酸ヶ湯を映す
山裾の広き敷地の師の生活除雪いかにとひた案じをり
雪折れの枝集めつつ思ひ馳す父の植ゑゐし柚子の老木
蹲踞(つくばひ)の水はかすかに揺らぎゐて白き和毛(にこげ)のひとつ漂ふ
常のごと目白も鵯(ひよ)も蠟梅の花散らしゐて初日光射す
雑煮食む夫のまろき背見つつゐて共に歩みし歳月おもふ
それぞれの生活(たつき)映して多弁なりただ一枚の賀状なれども
神棚に蜜柑に昆布鱒などを吊す慣はし実家の正月
客蒲団干す手を止めて蠟梅の香り楽しむ三箇日過ぎ