からから揺れき 蝉しぐれ
蝉しぐれ
ひらがなの名札
遠き日のなごりの癖の残る文字教へ子の便りいとほしみ読む
背広着てやや緊張の面輪なり同封されたる写真に見入る
教へ子と再会の日を赤丸に大きく印せり壁の暦に
ひらがなの名札触りてはにかめるかの日の姿目に浮かびくる
ま向へる児童の瞳に助けられ辞めず歩み来教師とふ道
夫と娘と機上に富士を見し後は何か佳き事ありさうな旅
雪の地の友を想ひて明(さや)かなる色もつ貝殻土産に拾ふ
島のガイド阿檀の葉を裂き風車(かざぐるま)つくりて語る昔の遊び
荒ぶれる風に向かひて平安名崎(へんなざき)宮古の海のとどろきを聞く
沖縄ののどけき海に福島の傷みの海の過(よぎ)りてたぢろぐ
泡盛の古酒すすめられ微酔(ほろよひ)の夫とゆるゆる歩みて宿へ