蝉しぐれ

ひとつの蜜柑

もみぢ散る古きベンチに老夫婦ひとつの蜜柑分けあひてをり

母と児とチワワ座しゐるシートにも紅葉は散りて児の笑ふ声

楓とふ言葉に友と訪れしカナダの旅のよみがへりくる

三代がともに働く蕎麦の店おしぼり運ぶは孫の役目か

手打ち蕎麦待つ間のしばしを隣席の媼と秩父の昔語りぬ

[音声でお聴きになれます]