からから揺れき 水の都
水の都
藁の香
父の綯(な)ふ注連の藁の香流れきてわれは傍へに遊びし遠き日
同窓会の集合写真載る賀状なづれば集ひし教へ子のこゑ
穏やかなる元日なりて子と夫と昼の炬燵に転(うた)た寝しをり
武蔵野の雑木林の裸木を一夜に染むる春の淡雪
見上ぐるに細き枝々雪積みぬ神在(ま)すごとき槻の大木
野鳥の目逃れたる実を葉の陰に抱きて万両雪かむりをり
新雪をふみて広場に遊べるか犬の足あと子等の足あと
朝日さし音無く落つる電線の雪は路面に白き筋(すぢ)なす
甚振(いたぶ)れる春の嵐に葉裏みせ櫟(くぬぎ)も槻(つき)もひたに生きをり
風向きのややに変はりて牡丹花の崩れて紅のうち重なりぬ
ざつくりと音立つごとく散る牡丹潔しとも哀れとも思ふ