からから揺れき 鎮魂の歌碑
鎮魂の歌碑
島ぐらし
二度三度地図をひろげて確かむる友住む島を訪ふは三日後
遠き日は船にて往来せしときく瀬戸を見下ろし車で渡る
この島のあの方角にきのこ雲見たりと八十路の人は空指す
広島より船にて逃れ来たる人あまりに酷しと言葉すくなに
被爆せる親族(うから)のさまを昨日のごとく語りてとほき眼をせり
島ぐらし鯛など常と笑まひつつ鯛飯炊きて振る舞ひくるる
帯石(おびいし)なる安産祈願の岩仰ぐ未だ子のなき吾娘の横顔
十余丈の高さありとふ立岩(たていは)は紙垂(かみしで)しろき馬頭尊抱く
夏の陽を反して澄める錦川鵜飼の夜の水面を想ふ
初デート錦帯橋と肩すくめ八十路の友は乙女の顔す