からから揺れき 鎮魂の歌碑
鎮魂の歌碑
運慶展
智拳印(ちけんいん)むな高に結ぶ運慶の如来座像の頰の清しき
触れたきと思 へるほどに御仏の座像の足裏やはらかに見ゆ
餓死するも戦さに果つるも見つめけむ無着菩薩の慈悲のまなざし
列なせる人らも一瞬動き止め無着菩薩の面輪仰ぎぬ
踏まれつつあがく邪鬼なりその貌も仕草も人の世を映すがに
金色のみほとけの像古りてなほ御唇(みくち)に紅のはつか残れる
運慶展出でて息子と久びさに珈琲店の窓際に座す
たわい無き話をしつつ駅までの道を息子と常のごとくに
ふと見れば革靴サンダルスニーカー座席の足もと生活(たつき)を映す
文庫本にアンダーラインを引きながら車内の老いは学生の顔
窓ぎはの席の幼は駅の名を指して読みつつ母を見上ぐる