からから揺れき 鎮魂の歌碑
鎮魂の歌碑
淡雪
肌寒き彼岸の朝(あした)やはやはと母の好みし貝母(ばいも)百合咲く
中日に墓参できぬをひたに詫び遺影の額を懇ろに拭く
白檀の香の広ごれる部屋に座し父母在すごとく遺影に語る
仏間にて衣に薫りの移りしか二階の部屋にも白檀ほのか
ぬるき燗好みし父を偲びつつ故郷の銘柄選りて供ふる
春彼岸つかの間降れる淡雪を父母の便りと思ひ掌(て)に受く
蕗味噌を作りし母を思ひつつ蕗のたう炊く彼岸の夕べ
習ひたる記憶無けれど蕗味噌の味に匂ひに母の顕ちくる
朝露をふふみて白の際立てり誇れるままに牡丹花の散る
詫びひとつ言ひて剪りたる白牡丹抱けば腕(かひな)を蟻のぼり来る
佳きことのありて牡丹の大枝を華やぎ添へて活くる玄関