北本の守り札 守札の概要と分類

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第1章 守札の概要と分類

第6節 信仰上からみた分類

(一) 私生活

図26 私生活に関する種別割合

私生活は自身や家族の生活の平穏、幸福を追求するための守札と定義した。図26に示すとおり、家内安全、安産・育児、無病・平癒、疫病除、災難除、火防、盗賊除、鎮魂と八分類される。

①家内安全

図27 (13-4)

この守札は「守札」として最も典型的なもので、私生活に関わるものとみなすことができる。二四〇点、五〇.五%である。図27(13—4)は桶川市にある旧石戸領の惣鎮守、諏訪神社の守札である。

②安産・育児

図28 (20-3)

この守札は予想に反して少ないが、護摩札に集中する傾向がある。図28(20—3)は川島町正直の如眼山潮音寺(正直観音)の守札である。なお、市域から安産の祈願に行った社寺は、市内では東間の浅間神社、市外では正直観音のほかに 鴻巣市三ツ木の三ツ木神社(山王様)、桶川市篠津の多気比売神社、県外では群馬県太田市の大光院(呑龍様)などがあった。
なお市内の荒井・高尾地区では、若い嫁と姑などで安産を祈願する観音講があり、正直観音に願をかけた。荒井地区の場合、観音講は昭和三〇年ごろに解散したという(『北本市史』第六巻民俗編一九八九)。

③無病・平癒

図29 (50-8)

神仏に加護を求める対象としては、無病・平癒などが代表的なものである。守札の形式は護摩札が多い。図29(50—8)は成田山新勝寺の「御符」である。

④疫病除け

図30 (70-2)

公衆術生制度が未発達の時代には、疫病がよく流行したので、疫病除けの守札が好んで求められた。図30(70—2)は愛知県の日本惣社の「津嶋牛頭天王御祈祷疫神除御札」である。

⑤災難除け

図31 (50-13)

広義に解すれば守札のすべては何らかの除災や避邪を願ったものといえるが、この守札は日常生活で起こる狭義の災難除けの守札である。形式は 守護札が多い。図31(50—13)は成田山新勝寺発行の災難消除のための 「御牘守」である。

⑥火防

図32 (35-6)

火災は古くから災難の代表である。したがって、多くの社寺で発行されており、鈴木家では三峯神社の守札が集中している。図32(35—6)は三峰神社の「三峯大明神火防守護攸」である。

⑦盗賊除け
盗難は財産の管理・保全に関わるもので三峯神社の守札が多い。東京都の御嶽神社では、防火と盗賊除けを合わせた守札を発行している。ここでは図33(35—10)「梵   字 (キャ)盗賊除三峯山」の守札を示した。
図34は鈴木家のものではないが、盗賊除けの守札は玄関の戸や蔵や納屋の柱や戸に年々貼り重ねられていった。

図33 (35-10)

図34 戸口に貼った盗賊除けの守札

⑧鎖魂

図35 (4-1)

現代社会はストレス社会といわ れているが、昔の人々も悩みごとがあったことに変わりはない。人は誰でも苦悩し、不安を抱えているもので、この解消をはかるために神頼みをすることは人間的な営みといえよう。鎮魂の守札は少ないが、当時の人々の心性を知る上で貴重である。図35(4—1)は 須賀神社の「鎮魂祭御祈祷之牘」 である。

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