デーノタメ遺跡 まえがき等

社会3 >> デーノタメ遺跡


北本市教育委員会 教育長 真尾正博
平成12年度に発掘調査が開始されたデーノタメ遺跡は、平成19-20年度の第4次調査によって、全国でも珍しい縄文時代中期の低湿地遺跡として広く知られるところとなりました。
この第4次調査では、5,000年前の泥炭層から色鮮やかな黒漆と赤漆に彩られた土器が多く出土し、縄文人の豊かな色彩感覚が現代によみがえったのです。また、調査区の6か所に設けられたクルミ塚では、オニグルミの核を中心とする数多くの有用植物の種実がそのままの姿で残っており、縄文人の食生活を具体的に物語る貴重なデータを得ることができました。デーノタメ遺跡は、まさに縄文時代のタイムカプセルといえるでしょう。
その後、平成27・28年度には遺跡の西側に広がる縄文時代中期(約5,000年前)の集落跡と、東側に広がる縄文時代後期(約4,000年前)の集落跡を対象に、集落の規模と構造を明らかにする内容確認調査を実施いたしました。
その結果、中期の集落は長軸で210mを超え、「関東最大級」の大環状集落であることがわかり、孤状に広がる後期集落も、弦長で270mという大集落であることが明らかになったのです。これにより、デーノタメ遺跡は約1,200年間にわたって大集落が継続していたことになります。これほど長い期間に大集落が継続し、それぞれの時期の集落が利用していた水辺が遺存しているのは、デーノタメ遺跡の大きな特徴です。
本書はこうしたデーノタメ遺跡の調査の成果をお知らせする概要報告書です。調査全般にわたり御指導賜りました 明治大学の阿部芳郎先生をはじめ、御協力を賜りました関係各位に感謝申し上げますとともに、本書が郷土学習や学術資料として幅広く活用されることを念願する次第です。
平成29年1月31日

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