北本市史 通史編 現代

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第1章 戦後復興期の北本

第1節 戦後自治の発足と村政

変わる警察制度
連合国軍の占領が始まって約一か月後、治安維持法および思想警察の廃止、特高(とっこう)警察の全員罷免(ひめん)(いわゆる特高パージ)が指令された。特高警察が言論・思想など、あらゆる基本的人権を抑圧(よくあつ)したことは周知の事実であり、その廃止は当然であった。それだけにとどまらず、警察制度全体を改革して、市民の警察に変えることは、民主化政策のなかでも最重要課題の一つであった。
昭和二十二年末、新しい警察法が制定された。同法はその前文に「日本国憲法の精神に従い、又地方自治の真義を推進する観点から(中略)人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、(中略)ここに警察法を制定する」と記し、地方自治の原則に即した地方分権と市民のための警察制度を規定した。その特徴として、次の三点をあげることができる。
1 国家地方警察と自治体警察の二本建てとし、その管理は民間人で構成する公安委員会が行う。
2 その任務を国民の生命・財産の保護、犯罪の搜査(そうさ)、被疑者(ひぎしゃ)の逮捕(たいほ)、公安の維持に限定する。
3 すべての市と人口五〇〇〇人以上の町村には自治体警察を置く。
(五〇〇〇人未満の町村は国家地方警察)
同法によって、北本宿村には自治体警察は置かれず、国家地方警察鴻巣地区署の管轄区域となり、北本宿巡査部長
派出所が置かれた。同所は次の五駐在所を置き、区域内を管轄することになった(現代No.十一)。
北本宿第一駐在所 北本宿・東間・下石戸下
北本宿第二駐在所 下石戸上・石戸宿・高尾・荒井
北本宿第三駐在所 深井・宮内・山中・古市場・北中丸・花ノ木・常光別所
馬室駐在所    馬室
常光駐在所    常光

写真2 北本宿巡査部長派出所

昭和30年ころか 本宿

国家地方警察の管轄となったため、北本宿村には公安委員会も置かれなかったが、鴻巣署ではそれに代わるものとして、治安協会内に専門委員会を設け、民主的運営をはかった。委員は管下各村から一名宛推薦(すいせん)することとなり、北本宿村からは議長内田柳之助が推薦された。しかし、こうした民主化の努力にもかかわらず、新しい制度は定着しなかった。自治体警察を置いた弱小市町村では財政負担が大きく、その維持が困難だったからである。自治体警察返上の声が各地であがると、これを利用して昭和二十九年、国家地方警察・自治体警察の二本建制が廃止され、埼玉県警察本部に一本化された。やがて県警本部長の任命制などを通して、再び警察庁に直結する機関に変り、地方自治の一環としての市民の警察は短い期間で消えていった。
昭和二十年代末から三十年代初めの時期は、占領政策の見直しを名目に、旧内務官僚などによる中央集権化すなわち政府官僚の復権(ふっけん)が進められ、警察制度のみならず地方自治そのものが骨抜きにされていき、分権的な地方制度も根づくことなく消えていった。

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