北本市史 通史編 現代

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第2章 都市化から安定成長へ

第2節 北本市の発足と市政の展開

2 市政の展開

膨脹続く財政
町制期から始まった財政の急膨脹(きゅうぼうちょう) は市制の展開とともに一層加速した。ちなみに昭和三十五年度歳出決算は約五八〇〇万円、昭和四十五年度には約十三億円、十年間で十ニ億円以上の増加であった。このうち昭和四十四~四十五年度の一年間で、なんと七億円も増加したのであり、北本における都市化の画期が昭和四十年代の中ごろにあったことを裏づけている。この本格的な都市化の到来の時期に、市制が施行されたことから、初期の市政が都市づくりを主要課題としたのは当然であった。
都市づくりについては、とくに都市基盤整備を中心にすでに述べたが、これをさらに財政面から総括してみよう。

図16 昭和46~60年度歳出決算の推移

(『北本の統計』より作成)

まず図16によって歳出をみると、昭和四十六年度に対して昭和六十年度決算でおよそ七倍、年間平均約五億円ずつの膨脹を続けた。膨脹の最大要因が建設事業費の増大にあったことは明白であり、なかでも学校の新増築や給食施設、道路や下水道事業費の占める割合が高かった。しかし昭和五十年代に入ると、少しずつ低下の傾向を示し、逆に人件費や公債費(市債の返済費用)が増大傾向を示している。それは都市化がやや鈍化し、それまでの開発型あるいは建設型行政から維持・修復型行政へ転換しつつある状況を示すものといえよう。今後、住民が生活の豊かさを求めれば求めるほど、福祉・教育文化などへの支出が増大し、今度は人件費、物件費の割合が高まっていくことになるだろう。見方をかえれば、建設型行政から消費・生活型行政への転換であり、それに伴って大型プロジェク卜優位の財政から、住民の多様な要求に応ずるきめ細かい財政へ変わっていったといえよう。

図17 昭和46~60年度歳入決算の推移

(『北本の統計』より作成)

次に図17によって歳入をみると、建設事業費の増大が国庫補助金への依存を強め、起債額を大きくしたのはもちろん地方交付金も増大した。しかし同時に、人口増加のメリットである住民税・固定資産税などの増収によって、自主財源比率はほぼ五十パーセント前後で推移し、昭和五十年代末になると、建設事業費率の低下=国庫補助金などの減少を反映して、その割合が上昇する傾向を示している。
昭和三十年代後半以後、毎年の予算編成期の広報を見ると、歴代の町長・市長が一貫して堅持(けんじ)した財政の基本方針は、「健全財政」だったことが明白に読みとれる。それが堅持できたのは、北本が首都五十キロ圏に位置し、都市化の進行がややゆるやかだったためであるが、もし今後も健全財政を続けるとすれぱ、ゆるやかな人口増加が続くなかで、自主財源をどれだけ確保できるかが条件となる。そのためには「住みよさ」や「豊かさ」を実感させる財政投資が必要となり、このバランスが今後の財政運営の課題となるように思われる。

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