北本市史 資料編 古代・中世

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 古代・中世

第3章 城館跡・金石資料・仏像

第2節 金石資料

1 板碑

(二) 市域の板碑調査
 北本市の板碑については江戸時代の地誌にすでに記録されている。就中(なかんずく)『玄同放言』は秀逸な記録である。同書『三巻下』の東光寺の条は、渡辺崋山が実地に石戸を訪れて写生し、周辺の人々から伝承を聞き取り、それをもとに滝沢馬琴が『吾妻鏡』との比較検討などを加えて詳述し、文政三年(一八二〇)に刊行したものである。『北本市史 第四巻 近世資料編』に東光寺の条全文を収録している。その他記録性は乏しいものの『甲子夜話』『新編武蔵風土記稿』にも記録されている。
  大正時代から昭和時代初期にかけて板碑の近代的研究が始まる。東光寺所在の「貞永二年銘板碑」は日本最古の板碑として注目され、多くの研究者が石戸の地を訪れた。
  市域における板碑の悉皆(しっかい)調査は三度行われている。はじめて悉皆調査を実施したのは北本市郷土史研究会で、一六四基の所在を確認した。その成果は一九七七年に北本市文化祭で発表された。北本市教育委員会社会教育課は昭和五十二年四月から同五十三年三月に調査した。これは埼玉県が昭和五十年より実施し始めた全県域にわたる悉皆調査に呼応するもので、二六四基が確認され、『北本の板碑』として刊行された。また若干を補足したものが『埼玉県板石塔婆調査報告書』に収録されている。その後調査漏れや新たに出土するなど再調査が望まれるようになり、北本市史編さん室が三度目の悉皆調査を委託形式で実施し、三八六基を確認したものである。その後の発見資料の内、紀年号のあるものについては本稿で補充した。
北本市の板碑関係文献一覧
1A滝沢馬琴『玄同放言』文政元年~三年
 B『日本随筆大成 第一期三巻』日本随筆大刊行会 昭和二年六月廿八日
 C『日本随筆大成第一期五』 吉川弘文館昭和五〇年六月一〇日
 D『北本市史第四巻近世資料編』
2A静山松浦清『甲子夜話』
 B中村幸彦・中野三敏校訂『甲子夜話』 東洋文庫306平凡社 昭和五二年四月二五日初版ー刷
3A林述斎他編『新編武蔵風土記稿』 文化十一年〜文政十一年
 B『新編武蔵風土記稿第八巻』 大日本地誌大系14 雄山閣 昭和五六年三月五日
 C『新編武蔵風土記稿』
4村高擔風「武蔵野の旅」 『武蔵野四巻四号』
5三输善之助「板碑の原始形に就いて」『武蔵野 一四巻四号』 昭和三年四月一日
6菅原 一「板碑考」『武蔵野一四巻六号』昭和四年一二月二五日
7三輪善之助「菅原氏の〃板碑考〃を読む」『武蔵野一五巻三号』 昭和五年三月二五日
8林 織善「川田谷、石戸両村見学旅行記」『埼玉史談一巻六号』 昭和五年七月三一日
9稲村坦元「青石塔婆(板碑)」『日本考古図録大成一三集』 昭和六年七月二〇日
10稲村坦元「石戸蒲桜青石塔婆に就いて」『埼玉史談四巻四号』 昭和八年三月三〇日
11A服部清五郎『板碑概説』単 鳳鳴書院 昭和八年
    B服部清道『板碑概説』単 角川書店 昭和四七年一一月二五日
12埼玉県『埼玉県史 三巻』 昭和八年一一月一〇日 
13山本一信「第五十四回北足立郡馬室村附近見学」『埼玉史談五巻四号』昭和九年三月三〇日
14服部淸五郎「浦桜遊記」 『武蔵野二一巻5号』 昭和九年五月一五日
15A稲村坦元「武蔵野の青石塔婆」『東京都文化財調査報告書 二集』 昭和三〇年三月三一日
    B稲村坦元『武蔵野の青石塔婆』単 埼玉県郷土文化会(Aの一部を再録)昭和三四年一〇月一〇日
    C稲村坦元『武蔵野の青石塔婆』単 埼玉県郷土文化会(Aの一部を再録)昭和四八年一〇月
16千々和実『武蔵国板碑集録 ー集』 単 昭和三一年六月三日
17小沢国平「板碑入門」 『埼玉の文化財』 昭和四〇年三月三〇日
18埼玉県文化財保護協会「昭和三九年度第二次指定文化財解説」『埼玉の文化財六号』 昭和四〇年三月三〇日
19A小沢国平『板碑入門』 単 隣人社 昭和四二年一一月一〇日
    B小沢国平『修訂板碑入門』 単 国書刊行会昭和五三年一〇月五日
20樋口清治「東光寺所在貞永二年銘板石塔婆保存処置報告書」『北本市文化財調査報吿書三集』昭和四八年四月
21江本義理「東光寺所在貞永二年銘板石塔婆石質調査報告書」『北本市文化財調査報告書三集』昭和四八年四月
22鶴岡静夫「初発期板碑の検討」『日本歴史 三〇三号』 昭和四八年八月一日
23青木義脩「至心信楽の願を刻む板石塔婆について」『浦和市郷土博物館研究調査報告書四集』昭和五二年三月二〇日
24川勝政太郎『日本石造美術辞典』単 東京堂出版 昭和五三年八月二五日
25下村克彦「北本の板碑」『北本市文化財調査報告書第九集』 昭和五四年三月三〇日
26下村克彦「北本市東光寺の十三仏板碑再論」『埼玉考古 第一九号』 昭和五六年五月一日
27坂詰秀一編『板碑の総合研究1総論編』単 柏書房株式会社 昭和五八年二月二五日
28磯部淳一「武蔵型板碑の周辺-小幡型板碑を考える-」『群馬県立博物館紀要第八号』 昭和六二年三月三一日
29埼玉県『埼玉県板石塔婆調査報告書』

<< 前のページに戻る