北本市史 資料編 近世

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編集にあたって
北本市史編集委員長大村 進
北本市域における私たちの先人のくらしの営みを明らかにしようとする『北本市史』の第一冊目として、このたび第四巻「近世資料編」を編集刊行し、市民の皆様にご覧いただける運びとなり、たいへん喜んでいる次第です。
木書の編集に当たっては、監修者の江袋先生の指導のもとに、「北本市史編さん大綱」の方針に則って進め、とりわけ資料集としての性格上、ともすれば難しいといわれる弊をできるだけ少なくするさまざまな工夫をこらしました。
本書で扱った時代的範囲は、北本という地域の歴史を明らかにする立場から、戦国時代の支配者後北条氏に代わって、新たに関東の支配者となった徳川家康の関東入国(天正十八年八月)から、日本の近代化があらわになる戊辰戦争ごろ(慶応四年)までとしました。この期の北本は一四~五か村からなり、幕末には三二給に細分支配されるなど、現在とは異なった支配体制・経済体制下におかれていました。
この間の様子を伝える資料は、先行する古代・中世期に比べ、一般には豊富に残されていると考えられていますが、北本についてみますと、近世文書の残存点数が意外に少なく、それも近世後期に集中し、かつ市の東側は西側に比べて少なく、皆無の字も見られるという地域的な片寄りが認められます。このため、編集担当者は市域はもとよりのこと近隣市町や関係機関まで広く資料収集の手を伸ばし、約一五〇〇点を確認して、その中から二二〇点を精選して本書に収蔵しました。しかしながら関係資料の少なさという限界は克服できず、残念ながら地域や項目により若干の精粗を生じておりますが、この間の担当者の努力の跡は本書の中で随所にくみとっていただけるものと思っています。
資料集の章立てについては、今後刊行される「通史編」との関連を充分に留意しましたが、また、本書のみを読まれても、ごく自然に北本の近世史が理解できるように配慮しました。全体をくらしの営みに即して四章構成とし、さらに章の下に節と項を設け問題点を明らかにしてあります。
特に留意した「学問的水準を維持しつつ平易な表現で叙述し、市民に長く読みつがれる親しみやすい市史とする」ために、各節の冒頭にその節の概説を掲げて位置づけを明らかにし、さらに資料の一点一点に解題や用語解説、内容解説を施し、ともすれば取りつきにくい原文資料の理解を容易にしてあります。また、多量の紙幅を要し、類型的でかつ煩瑣にわたる検地帳・名寄帳の類は表化したり、原文書の写真や図版を多用し、視覚面からの理解を図るなどの工夫もこらしてあります。
以上、編集に当たって配慮した幾つかの点を申し述べましたが、まだまだ努力すべき点が多々あるかも知れません。特に資料の継続収集、発掘は今後の課題でもあります。また市民と一緒になって編集を進めていきたいと願う我々にとって、皆様方の声や協力は最大の糧であり、味方であります。今後刊行されます資料編や通史編のためにもご支援をお願いします。
最後になりましたが、近世担当の編集委員や専門調査員の皆様には、多忙な身にも拘らず無理な注文に対し一つ一つ快く応じてくれました。その労を多とすると共に、ご指導、ご支援くださいました市史編さん委員会、市当局、資料提供者、事務局並びに関係各位に対し心からお礼を申しあげ、なお、今後とも編さん事業に対し一層のお力添えを賜わりますようお願い申しあげる次第です。

  昭和六二年三月

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