北本市史 資料編 近代

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 近代

編集にあたって
北本市史編集委員長 大村 進
このたび北本市史第二回の配本として、近代・現代資料編を後掲の関係者の熱意と努力により完成し、ここに市民の皆様にお届けできますことを、編集に携った一員として衷心から喜びとする次第です。
本書の編集について、その方針とそれに関わる留意点や特徴等を大略申し上げ、利用の参考に供したいと思います。本書編集の基本方針は、既刊の近世資料編の編集方針と何ら異なるところはありません。「北本市史編さん大綱」に則り、市民のための、市民に親しまれる市史づくりを目指したことは申すまでもありません。しかしながら、それは言うは易く、資料編としての特性上、行うことは誠に難しいことでした。そうした困難な点を認識しつつ次の諸点について留意し編集に当りました。
まず第一は、北本市史近現代の普遍性と特性をどのように表わすかという点であります。普遍性とは北本という特定地域の歴史を、日本全体の歴史の中にどのように位置づけるかという、いわゆる日本近現代史と北本近現代史との相互関係の究明にあります。この時代は、我国の歴史上まれに見る変革の時代で、明治維新を経て我国が近代国家として成長し、激動する東アジア情勢に規定されながら資本主義化・帝国主義化の道を辿り、やがて敗戦により平和国家・民主主義国家建設を目指し、アメリカとの強い絆のもとに高度経済成長策へと進んでいった時代でありました。こうした時代のうねりの中で、北本の動きをとらえ、その独自性を明らかにすることはたいへん難しいことでした。そのため、北本の各時代の特徴を示すテーマを設定し、それを章・節・項に表わして構造的に編成してみました。各項にはその頃の内容に応じた資料を最少限編年順に配列してあります。そして、各節毎にどのような意図をもって資料を選択したかの狙いは、解説として述べておきました。従って解説を辿ることによって北本の近現代史のおおまかな特徴を把握でき、その流れを理解できるよう配慮してあります。
第二は資料収集についてであります。私達が歴史の流れを確実につかむには、それを明確に示す適確な資料の収集が前提になります。しかし、近現代は我々にとって身近な時代でありながら、変革期そのものの性格を反映して適確な資料の残存が非常に乏しい現状にあります。従って県下いずれの市町村史誌にも見られるように、県や市町村の行政文書や諸記録、新聞等にその多くを依存せざるを得ず、市民の手になる記録や文書が得られない苦しみがありました。その欠を補うものが聞き取り調査の活用ですが、本書では編集作業上それらを活用できず、通史編の叙述利用に委ねることにしました。
第三は限られた資料にあって、北本に関わる資料はできるだけ収載しようとしたことです。このことは当然膨大な紙幅を必要としますが、限られた頁数処理のため必要部分のみを抄出し、一部を割愛せざるを得ませんでした。このことは多様な歴史認識を促す面において妥当か否かの議論の生ずるところですので、資料の全体像確認の要望に即応できるよう、出典を詳しく記し、可能な範囲で資料番号を付して置きました。また当時の世相下の見方を知るてだてとしても、新聞を多用しましたが、その評価については留意する必要のあるものもあります。
第四は、市民の動向に焦点を当てようと努力した点です。市民の歴史を編さんする立場からすれば極めて当然のことですが、市民の手になる記録や日記などが得られなかった関係上、例え公文書を使用する際でも、市民の動向や考え方を示すものを基本として選択し、抄出しました。
第五は、市民に親しまれる市史づくりということで、それに即したテーマを設定し、市民がどのように問題解決に努めたかという視点で解説を付しました。そうは言っても個々の資料は、資料集としての性格上親しみにくいものであり、まして一字一句まで詳細に理解していただけるように編集するのは至難のわざであります。しかし、できるだけ理解を深めていただくよう、例えば資料そのものに誤りや宛字等がある場合は、傍らに注を施し、個々の資料の歴史的位置づけや内容については、解説で触れておきました。
以上のような留意事項を踏まえて、本書は近代と現代に大別し、近代は徳川幕藩体制が崩壊する戊辰戦争(慶応四年)から第二次世界大戦の終戦(昭和二十年八月)時まで、現代は敗戦の復興から昭和四十六年の北本市誕生までとしました。近現代ともに前書(近世資料編)や前編(近代編)の構成を受けて章立てし、さらに社会機能別の節立てとその時代の特徴を示す項立てとにより、北本の近現代史の全体像を巨視的ではありますが把握できるように努めました。
市民の皆様方が本書を繙き、北本の発展に尽した先人の真摯な営為の姿をご理解いただき、豊かな歴史像の構築と郷土愛の涵養に役立てていただければ幸いです。最後に多忙ななかを資料の収集、選択、原稿執筆に当られた編集関係者及びご苦労をおかけした編さん室職員の方々に、心からお礼を申し上げます。

<< 前のページに戻る