北本市史 資料編 現代
第2章 北本の農業
第4節 畑地灌漑と水田土地改良事業
73 昭和三十九(一九六四)年十二月 北本東部土地改良区設立に関する報告書(『北本東部土地改良区関係綴』)
埼玉県知事 栗原 浩殿
埼玉県技術吏員
耕地課技師長島英次
土地改良事業計画書の審査について
北足立郡北本町大字古市場一四五番地矢口武司ほか一六名から申請のあった土地改良事業計画書について調査した結果適当と認め、その報告書を提出いたします。
記
一、調査月日 昭和三九年一二月八日
二、調査箇所 北本町役場及び現地
三、立会者 申請人代表
矢口 武司
吉野 光吉
北本町役場産業経済課長
井野 貞次
浦和土地改良事務所指導課長
池田貞次
一、 | この事業の必要性について |
この事業地区は北足立郡北本町大字古市場、大字北中丸、大字山中の畑一五・ー〇haその他二・七九ha計一七・八九haの正方形をなした畑地の地域で区画整理事業を実施するものであり、その必要性について述べる。 | |
(1) 自然的条件 | |
地域は北本駅の東北約一kmのところにあり、北は県道下石戸上菖蒲線を境いとし、東は県道蓮田鴻巣線を境いとしている畑地帯で、標高はMSL一六m〜二〇mとなっている。なお、耕作者の部落は計画地域の周辺に点在している。地質は第四紀新層に属する洪積層で土壌は明灰色をした壌土で、耕土厚は一五〜二〇cmであり地下水は一般的に低い。 | |
排水については県道にそった古市場排水路と地区東北線に山中排水路の二幹線があるが、地区内には確たる水路がなく 一時的な大雨に際すると部分的にたん水を生じ相当の被害がある。 | |
地区内の道路については少なくまた巾員狭少のため農作業機械の運行収穫物の搬出等に多大の不便を来している。 | |
(2) 社会・経済的条件 | |
関係農家戸数六五戸にして一戸当り平均耕作面積は水田三〇a畑一二〇aの畑作経営を主とする地域で畑作における陸稲・麦類・甘藷・野菜(ピ—マン・キャベッ・ネギ)等に依存する割合が高く、野菜等の流通機構の出荷体制として園芸組合が組織されており都市近郊農業地帯としての特色を示している。 | |
以上の諸点を検討するに本事業はこれらの悪条件を除去するため区画の形状を整理すると共に、排水路及び農道を新設整備し、併せて附帯構造物を設置するものであり、その必要性は極めて緊急を要する。 | |
二、 | この事業の可能性について |
この事業計画は、都市近郊農業地域として野菜栽培上の農作業の利便、または機械化作業の一貫性と相まって単位当りの労働生産性の向上を図り、自立経営農家を確立する基礎的条件として土地整備するものであり、以下各項目について検討すれば次のようである。 | |
(1) 自然的条件 | |
地域は県の中南部にあたる稍々丘陵性の畑地帯で排水は前述のとおり古市場排水・山中排水に直接排水されるので耕地内の小排水路及び両幹線排水路を新設整備することにより充分な機能を発揮され道路においては、地区中央部に一路線幹線道路(有効巾員五・〇m)を設置し、部落間の連絡に便ならしめると共に耕作道路(有効巾員三・〇m)を幹線道路に直角に一五〇m間隔に配置し、区画は長辺七〇m短辺三〇mの二一a区画とし、短辺の一方に道路を他の一方に排水路を配置計画され、近代農業経営の土地基盤整備として合理的な計画がなされている。 | |
(2) 社会・経済的条件 | |
この事業に要する費用は二、一五〇千円であり、一〇a当りの事業費は約一五、六〇〇円である。すなわち本事業施行により農作物の増収及び労力の節減が見込まれるので事業に要する組合員の負担能力は充分あると認められる。 | |
以上の如く計画も妥当であり、且つ、本事業推進にあたり地元関係者の大部分は熱意旺盛である。また北本町当局においても全面的にこの事業に対して協力援助を行うものであり事業実施の可能性は充分あると認められる。 | |
三、 | 事業主体がこの事業を行なうことに対する技術的意見 |
この事業は区画整理事業であり、技術的に特に注意する点はないが事業実施にあたっては専門的技術者及び監督官庁の指導を受け細心の注意をはらって施行する必要がある。 | |
四、 | この事業の利用と費用の比較 |
作物名 | 要因 | 数量 | 単価 | 金額 | 所得率 | 所得額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
t | 円 | 千円 | % | 千円 | |||
陸 稲 | 実面積減 | (一)二・三 | 八三、三三〇 | (一)一九三 | 六九 | (一)一三二 | |
かんらん | 作 付 蔵 | 四四一・六 | 一九、〇〇〇 | 八三九 | 六五 | 五四五 | |
小 計 | 六七七 | ||||||
人 | |||||||
労力節減 | 六八九 | 六〇〇 | 四一三 | ||||
小 計 | 四一三 | ||||||
計 | 一、〇九〇 |
五、 | 他の事業との関係 |
なし | |
六、 | 計画に記載された事項の当否 |
本事業計画は全般的によく検討されており適当と認められる。 | |
七、 | この事業によって生ずる施設の管理方法及び技術的意見 |
この事業により農道・排水路及び附帯構造物が新設整備されるものであり、これら施設の維持管理には常時留意して計画断面を保持しその機能を充分に発揮されたい。 | |
八、 | 結論 |
以上前項までに述べたとおり本事業計画は適当と認める。 |
理事長殿
埼玉県農林部長
昭和三九年度県費単独土地改良事業採択について
(通知)
昭和三九年一〇月二八日付けで申請の土地改良事業について、土地改良事業補助規程及び県費単独土地改良事業実施要領の規定により、下記のとおり本事業を採択する。
記
一 | 工種 | 区画整理 |
二 | 事業量 | 一六・九ha |
三 | 事業費 | 一、六一九、〇〇〇円 |
四 | 条件 | |
五 | 補助申請書提出月日 | 昭和四〇年二月二二日 |