実録まちづくりにかける集団
第1編 何にも勝る体験学習
総合学習と生涯学習平成十四年度から、学習環境が大きく変化する制度改革が全面施行された。いわゆる総合的学習である。この制度について文部省が実施発表したのは、平成九年であった。学校・地域・家庭がともに手を携えて、子供たちの学習力の向上を目指そうとしたものである。
しかし、この大きな問題を学校側は自分たちだけのこととして、五年もある準備期間中に、何一つ地域と相談も打ち合わせもしなかった。
子供たちが自主的に学習課題を見つけ、地域・学校・家庭が協力してこれを支援し、学習成果をまとめ表現することがねらいとなっていたはずである。そのことについて、学校もPTAも決して正面から取り組もうとせず、単純に時間が過ぎれば解決すると判断したのだろうか。
実際に施行直前になって学校側があわて出した。どう取り組んでいいかわからない、学習メニューとして何を提供していいのか資料すら持たない。協力を仰ぐべき市民指導者のリストもない。文部省が当然提示してくれるものと勝手な判断をし、ただ待っていただけであった。
文部省側では、「何も提示しない、それぞれ地域で考えなさい」と、最初からいっていたのにである。
「学社融合」「学社連携」「産学協同」など、社会教育と学校教育が手を結び、来るべき二十一世紀の青少年に、また、二十二世紀を担う青少年を育成する土壌づくりのために、小さな枠にとらわれていてはならないと、さまざまな呼称で、早くから社会教育の側では提言していた。しかし、学校教育は聖域であるとする考えがもたらした結果が、大幅なスタートの遅れを露呈したのである。