北本市の埋蔵文化財

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中井1号古墳発掘調査報告

横川好富

4.内部主体部

内部主体部は略東西の主軸を持つ両袖型の横穴式石室で、羨道を西に向けている。使用されている石は砂質の凝灰岩の切石で、粘土を間に詰めながら比較的整然と積まれている。全長4.16mの小型の石室であるが、一応羨道、前室、玄室部を有するものである(第2図)。

第2図 内部主体実測図

羨道部はごく型式化したものであり、長さ66㎝(北側壁)幅96㎝であり、西に向うにつれ側壁は上面が傾斜し幅狭くなっていく。羨道部には封鎖石はみられなかった。おそらく築造当初からなかったものと考えられる。
羨道部と前室部の間には幅34~38㎝の切石が粘土を間につめ、三段に床面から約42㎝上まで積まれていた。これが封鎖石であろう。この羨道部の幅や高さ、封鎖石の様子からして、ここを利用しての玄室への出入りは全く不可能である。
前室部は長さ88㎝(袖口まで)幅88㎝高さ84㎝を測る。側壁は略7段積まれていたらしいが、上部は攪乱されている。
玄室はいわゆる三味線胴部の変形といえるものである。すなわち奥壁と左側壁はやや張りを持っているが、右側壁はほぼ直線的であり、両油の形がやや異なっている。長さ2.26m、幅奥壁で1.8m、前室附近で1.76m、中央部最大幅1.9mを測る。 側壁・奥壁とも切石を積んだもので、 北側壁・奥壁は3~4段、 南側壁はわずか1段のみ残存していたが羨道前室等の様相から推測して、 略1.3~1.5m、約8段前後と考えられる。天井石らしいものは、前室はむろん、玄室部からも発見されなかった。
玄室内部はすでに完全に攪乱されてしまっており、遺物も直刀片が玄室右側壁隅からわずか2個発見されたのみで、棺床面も明瞭にとらえられない状態であった。

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