石戸蒲ザクラの今昔 Ⅱ 蒲ザクラと渡邉崋山

社会1 >> 石戸蒲ザクラの今昔 >> Ⅱ 蒲ザクラと渡邉崋山 >>

Ⅱ 蒲ザクラと渡邉崋山

コラム➁ 描かれた蒲ザクラ

江戸時代の文化・文政期、すでに江戸市中に知れ渡っていた蒲ザクラは、衆目を集め、各種の地誌や随筆に紹介されるようになります。その最も秀逸な挿絵は、先に紹介した渡邉崋山の手になる一連の作品ですが、これ以外にも注目すべき絵画があるので、簡単に紹介しておきましょう。
下に掲げた❶『甲子夜話(かつしやわ)』は、平戸藩主の松浦静山の著作で、文政四年(一八二一)の甲子の夜に起稿したのでこの名があります。絵画としてはかなり簡略化されているものの、板碑や範頼塔についてはもらさず描いています。
❷『新編武蔵風土記稿』は、昌平坂学問所の事業として各村から調書を出させ、実地検分を行って編さんした地誌です。
蒲ザクラは「石戸宿村」の項にあり、老人と子どもを描いたモチ—フは、口絵の尾形月耕の版画にも受け継がれています。
また、❸は津田大浄の『遊暦雑記』中の範頼塔を描いたもので、現在とほとんど変化がありません。

❶『甲子夜話』中の蒲ザクラ(松浦資料博物館蔵)

❷『新編武蔵風土記稿』中の蒲ザクラ(大日本地誌大系⑭、雄山閣)

❸『遊暦雑記』中の範頼塔(国立公文書蔵)

<< 前のページに戻る