雑木林と泉
武蔵野のおもかげをのこす雑木林は、季節ごとに、わたしたちの目をたのしませ、生活にやすらぎとうるおいをあたえてくれる貴重な財産です。この雑木林はまた、動物たちの生活にとってもかかすことかできません。 野鳥やたぬき、いたちなどはこの雑木林をねぐらとしています。コナラやクヌギの樹液に集まるカブト虫やクワガタ虫、国のチョウに指定されているオオムラサキなどもこの雑木林がなければ生きていけません。
しかし、今ではむしろやっかいものあつかいに されたり、
建物をつくるための土地として切りたおされたりしています。
さて、みなさんはこの雑木林と、これからお話する
泉が深くむすびついているのを知っていますか。市の西部の高尾、荒井、石戸宿ふきんの
標高は三〇メートルほどで、大宮台地の
最高点にあたっています。この高台には、わき水によってけずりとられた
谷地が、くねくねとまるで
大昔の川のようにのこっているのです。ここには、今でも地下水がふつふつとわき出る泉があり、動物や植物の
宝庫となっています。中でもたくさん住み、めずらしい
種類も多く見られるのが、
清流のあかしとされるオニヤンマをはじめとする各種のトンボです。夏の夕方には、手でつかまえることができるほどです。それだけ、緑
豊かな 自然がのこっているということです。このほか、野鳥をはじめタナゴの住む池、カタクリや二リンソウなどの植物が生えている谷もあります。
これらの動植物にとって、かけがえのないこの泉の多くは、実は雑木林にふった雨水が、地下にしみこみ、ひくいところで
泉となったものです。
雑木林には、たくさんの落ち葉があります。この落ち葉は、ちょうどスポンジにしみこんだ水のようにふった雨をのがさずたくわえる、
天然のプールです。 たくわえられた雨水は、じわじわと地下にしみこみ、いくすじかの
水脈をつくりながら、やがて泉となるわけです。
つまり、雑木林が少なくなると、人間はもちろん動物や植物にとって命の水である泉が、かれてしまうのです。