北本のむかしばなし くらしをつたえる話

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はつうま

二月になって最初さいしょうまの日には、はつうま(初午)という行事が行なわれます。この日は、かみだなやお稲荷いなりさんのほこらに、赤飯せきはんと油あげとスミツカリをそなえます。お稲荷さんは、家や村を守る神様であり、農業の神様でもあります。そのため個人こじん屋敷やしきのほこらにまつったり、村で共同きょうどうでまつったりします。
初午の日は仕事を休む日です。女の人は、はり仕事さえしませんでした。ふろをわかすと火事になるといい、ふろもわかしませんでした。初午の日は、お稲荷さんにそなえ物をし、仕事も休んで、しずかにその年の豊作ほうさくをいのる日だとされています。
お稲荷さんにはがんかけをする人もいます。そのおねがいがかなうと人びとは、お礼にきつねのぞうをそなえて感謝かんしゃの気持ちを表します。
初午の日にだけ作るそなえ物が、スミツカリです。木のえだのまたになった部分に、竹の歯をつけて作った大きなおろしで、たくさんのダイコンをおろします。おろしたダイコンに、節分せつぶん の日にのこしておいたダイズと、こまかく切った油あげを入れていっしょににます。塩味しおあじにしたり、しょうゆ味にしたり、正月の塩じゃけや酒かすを入れたりと、味つけはそれぞれの家でくふうします。スミツカリは、さらではなく、ひとにぎりのワラをおって作ったワラヅトに入れてそなえます。このことからスミツカリは古い食物だということがわかります。

ひえたスミツカリはおいしいものです。やわらかくにえたダイコンがしたの上でとろけるような感じと、いったダイズのこうばしさが交りあってどくとくの味わいがあります。荒井の黒稲荷くろいなり、北原の福田稲荷ふくだいなり、高尾の馬頭観音ばとうかんのん、台原のお稲荷さんなどに行くと、今でもスミツカリのそなえてあるのが見られます。

(1)初午……むかし、日や時刻じこくを数えるのに、十二といって、(ねずみ)、うし(うし)、とら (とら)、(うさぎ)、たつ(りゅう)、(へび)、うま(うま)、ひつじ(ひつじ)、さる(さる)、とり(とり)、いぬ(いぬ)、(いのしし)の十二の動物の名を使った。立春りっしゅんの後のはじめての午の日を、はつうまといった。

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