北本市史 資料編 近世

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第1章 領主と村

第2節 村の動き

近世の村では、村民同志が村内での生活上のきまりや生産上の制限などを自治的に決めており、(これを私法という)村の秩序の維持、風俗の取締り、出火盗賊の際の出動、用水や林の使用方法、休日の励行、野荒し、畑荒しの禁止など広範にわたっている。これら村法は総称して一般に村定(むらさだめ)とか村掟(むらおきて)、村議定(むらぎじょう)などとよばれる。本節に収録した惣百姓議定書の写(資料45)は、田畑山林等の使用の村定である。

資料45 惣百姓議定書の写(本宿 岡野正家文書)

江戸時代、農村支配の末端に位置づけられて村政を担当する農民を村役人とよび、名主・組頭が当初設けられたが、やがてこれらを監視する役として百姓代が置かれた。村役人に対する給与は給分(きゅうぶん)とよばれ、役高引(除高(よけだか))と称する年貢あるいは夫役(ぶやく)の免除や役米・役銭給与の形が多かった。これらの費用は村入用に計上され農民より集めた。役高引の場合も免除された分の年貢は、他の農民が負担した。名主には多くの職能があったが、年貢割当てをはじめ村入用その他の諸割賦は大切な業務であった。これらは負担する農民の側からみれば、厳正公正さを要望したいところで、それ故に百姓代が立ち合うならわしであったが、それでもとかく問題視されたので議定が結ばれたり訴訟に持ちこまれることもあった。このほか名主に関係した資料(資料46~51)を含め九点を本節に収めた。

資料50 名主役諸証拠控帳引継目録(本宿 岡野正家文書)

村入用は村役人の給与、出府の費用、村として使う筆墨紙代、領主側から出張してきた役人の接待費、村を通過する役人の送迎の費用など近世農村が村落としての機能を果たすための費用で、これも村の動きを示す資料である(資料52)。
村落生活のさまざまなトラブルが村方出入で、本節には村境論争(資料56・61)、荒川の渡守をめぐる支配権争い(資料60)、土地争い(資料63)、傷害事件(資料58)、離婚訴訟(資料62)、不当な暴行事件(資料57・64・65)等を収録しておいた。

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