実録まちづくりにかける集団

北本この人 >> 実録まちづくりにかける集団

第2編 「わぁ、つくしんぼみたい、わたしのおうち」
   あそびの学校が歩んだ十三年

五 遊びを知らない親と教えることが出来ない大人

遊びを教えられない大人達
偏差値教育の中で育った大人達は、当然外遊びを知らない。知らないことを伝えることはできない。したがって子供にとっても、親と一緒に野外の遊びをすることなど、まったく経験していないのだ。泥の山を見れば喜んでいたずらをする、木があればすぐ登る、水溜りがあれば引っ掻きまわすといったような、子供にとってはごく自然な行動すら、経験していないのである。裸足になったことがない子供もいた。もちろん自分で何かを作って遊ぶ、などという経験をした子供は皆無であった。
私たちの子供時代は、外あそびが当たり前であり、ガキ大将を頂点として、しっかりとした上下関係を経験の中で学んでいった。今の子供は残念ながら、横並びであり、異年齢との遊びは、ほとんどした経験を持たない。また、遊び道具がなかった時代には、色々な物を自分たちの手で作って遊んだ。何でもそろっていて、金さえ出せば手に入る時代に育った子供たちは、自分で創り出す経験をしていない。つまりは、何もないところから「創り出す」という発想が訓練されていない。まさに、遊びを知らず、教えられない大人達と、与えられなければ、何もすることができない子供たちの構図である。
あそびの学校にきて、グループワークとして料理をしたり、テントを作って泊まるといった大きなプログラムになると、初めて参加する子供たちは、自分がいったい何をすればいいのか、皆目見当がつかないようである。しばらくはボーッと、できる子達の動きを見ているだけ。やがて、自分にもできそうなことが見つかると、おずおずと作業の輪の中に入ってくるが、それでもまだお客様状態から抜け出せない。「指示がなければ動けない」のである。

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