実録まちづくりにかける集団

北本この人 >> 実録まちづくりにかける集団

第2編 「わぁ、つくしんぼみたい、わたしのおうち」
   あそびの学校が歩んだ十三年

五 遊びを知らない親と教えることが出来ない大人

紐が結べない子供たち
ある年、自然林を借りて望楼を作ろうということになった。下草を始末し、枝振りを考えて竹の桁を渡し、孟宗竹を割ったものを敷いて床を作る。この遊びは、私たちが子供の頃には定番のものであった。竹を切り、割って材料をそろえた。いよいよ、紐を使って縛る作業となって驚いた。子供たちは、紐の結び方を知らなかったのである。たまたまこの日は、学校にとって初めて、週五日制が取り入れられた記念すべき日でもあったことから、ある学校のPTAのお母さんたちが、見学にきていた。そして、「子供達が紐が結べない」ということを目の当たりにして、驚くと同時に子供たちを見て笑ったのである。
カチンときた私は、すぐさま紐を人数分、五〇センチばかりの長さに作り、お母さんたちに渡して
「いっしょに結んでみてください。最初は片結び、続いて引き解け結び、次に蝶結び…」
とやったところが、子供を見て笑った大半のお母さんが、満足に結べなかったのである。さすがに、できなかったお母さんたちは、ばつが悪そうだったが、実際家庭の中で、どれだけ紐を使っているかを考えれば、当然といえば当然の結果でもあった。親ができないのに、子供にできるはずがない。
結局、親たちと一緒に、子供たちに紐の結び方の講習である。とにかくここをクリアーしない限り、次の作業に移れない。つまり、望楼づくりが不可能になってしまうのである。こうして、思いもよらないことで時間がかかってしまったが、少しずつ作業らしくなってきた。
竹を割り、ささくれを削って怪我の防止をし、材料をあげる。柱にあわせて床材を敷き、なれない手つきで紐を結ぶ。班ごとに競争していたが、少しずつ形になってくると面白さが増し、それぞれに積極さが出てきた。床を敷き終え、はしごをかけると、どうにか望楼は出来あがった。できた望楼に登って、遊び始める姿は、昔の子供たちと変わらない。自分たちで作った「秘密基地」は、多分子供たちにとって忘れることができないものになったことだろう。

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