北本の守り札 守札の概要と分類
第1章 守札の概要と分類
第6節 信仰上からみた分類
(四)信心図51 信心に関する守札の種別割合
①大般若経
『大般若波羅密多経』は、奈良・平安時代から諸大寺で鎮国除災を祈って転読が行われた。転読とは経文を読誦する真読に対して、六百巻を一二人の僧が五十巻ずつ分担し、一巻ずつ短い経文を誦しながらめくり、読経に擬するものである。後世になると国家安穏・災害消除の祈祷行事として、しだいに真言宗、天台宗、禅宗など、全国の名刹でも行われるようになり、さらには地方の寺院や民間にまで広まった。
図52(102—1)は羽黒修験行力院が発行したもので「 (ジタマン) 奉転読大般若経/ (カーンマン)護摩修法/御祈祷札」の文字が、図53(62—1)は草津山光泉寺が発行したもので「 (ジニャ)奉転読大般若経六百軸家内安全祈攸」の文字がある。これらは『大般若経』の御利益にあずかるため、六百巻の転読をし、七難即滅七福即生を願い、家内安全を祈祷した守札である。また図54(63—10)は羽黒山先達左門坊の守札で、「 (アーンク)湯殿/月山/羽黒/三山御巻数」という文字があり、出羽三山の御巻数を転読し、災厄消除招福を祈願したものであろう。
図52 (102-1)
図53 (62-1)
図54 (63-10)
図55 (71-1)
③諸願成就
図56 (33-3)
④月参
図57 (28-4)
⑤大祓
人あるいは物、場所などについて、その汚穢、罪障、災厄などを除するための儀礼が祓いである。一般には榊に付けた木綿垂を頭上で払うもので、今日でも地鎮祭などの際にみられる。図58(A49)は発行元が不明であるが「鎮守神前大祓之神璽」の文字が、図59(44—12)は「御嶽山/大々御神楽御祓」の文字がある。後者は、神楽奉納に当たり、賛助金を拠出した証しに授与された守札であろうか。
図58 (A49)
図59 (44-12)
図60 (E2)
図61 (G34)
図62 (44-27)