北本の守り札 守札の概要と分類

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第1章 守札の概要と分類

第7節 守札の整理

守札の整理はその保存状態にもよるが、第一にほこり、汚れなどを除去することから始めなければならない。鈴木家の場合、一部は柱に貼られたものもあったが(図63)、大半は長い年月にわたり放置された状態で発見されため、煙やほこりによって黒色から褐色に近く変色しており、さらに毎年、糊付けによって貼り重ねられていた。図64は整理前の守札の保存状況である。

図63 柱に貼られた守札(八枝神社)

図64 発見直後の守札の束1


図65 発見直後の守札の束2

図66 束を開いた守札

守札は損傷しないように慎重かつ丁寧に剥がしていくが、容易にはいかない。そのままでは整理できないので、最小限の破損は伴うが、比較的剥離しやすい箇所を選び、ある程度のまとまりをもって分離した。
次に、この塊としてまとまっている札を一枚ごとに分離していく。この際に用いた方法は、塊りごと水の中につけることであった。初めの三、四回は薄い茶色に汚れが滲出してくるが、この後は一日に二~三回水を取替え、汚れを水に晒すとともに、水が内部まで浸透し、糊の粘着力の低下を待った。强固な糊も四日~五日経つとはがれやすくなってくる。日数を置けばはがれやすくなるが、反面紙質は脆くなる。とにかく汚れきっている守札なので、こまめに清水に取り替えながら、水の中で慎重に剥がしていく。それでも紙質の弱いものは若干の破損は避けられなかった。
こうして分離した守札を水中に沈めた渋紙(なければ水に強い化学繊維入りの紙でも可)の上に守札を乗せ、すくいあげる。この後は裏打ち作業に準じ、お札の痛み具合に応じて裏打ちした。裏打ちに使用する紙は、薄手の和紙で永年の保存に耐えるように中性紙が適している。
糊については永年の保存を考慮すると、紙魚(しみ)による被害を避けるため、できるだけ栄養価の低い正麩糊がよい。市販品が入手できない場合は、小麦粉で作ることもできる。正麩糊の作り方は、まず小麦粉を大量の水で溶き、しばらく置いてから上澄み液を捨てる。これに再び相当量の水を加え、よく攪絆してしばらく置く。これを四、五回繰り返すとグルテンが残る。このグルテンに水を加えて煮ればでき上がりである。ただし、糊の濃さに注意しなければならない。結論を先にいえば、できるだけ薄めた方がよい。総じて裏打ちした守札は、後々に何らかの事情によって剥がす必要が生じることが想定される。その際、水に浸ければ守札の本体を傷めることなく、裏打ちの紙と容易に分離することができるからである。

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