北本の守り札 守札の概要と分類

社会2 >> 北本の守り札 >> 守札の概要と分類 >>

第1章 守札の概要と分類

第5節 守札の形式上の分類

(三) 絵札

図17 絵札の種別割合

絵札は神像、仏像、御影、宝印・梵字、その他に分類される。 図17はそれぞれの割合を示したもので、神像は九一点、五〇.三% と最も多く、次いで仏像六七点、三七.〇%、宝印・梵字一七点、九.四%、その他六点、三.三% となる。


①神像
崇敬の対象とする神の姿を表現したもので、鈴木家における神像の守札は九一点である。
図18(A14)は大黒を表現したものである。大黒は恵比寿とならび、天台、真言両宗によって習合化された日本の福神の代表である。米俵にまたがり、富や豊作を招来する神と考えられていた。図19(63-9)は出羽三山の一つ羽黒山の三面大黒である。大黒天(中央)と弁財天(向かって右)、毘沙門天(向かって左)という三福神を合わせた三面一身像である。
また、図20(42—2)は東京都八王子市の高尾山薬王院の飯縄大権現で、カルラ像といわれるものとほぼ同形である。カルラはガルーダというインド神話の巨鳥のことで、後に仏法の守護神となつた。なお、わが国でいう天狗はこれが変形したものと伝えられている。鈴木家にはカルラまたはカルラ像を描く守札が一〇点ほど認められる。

図18 (A14)

図19 (63-9)

図20 (42-2)

②仏像
仏像の守札は六七点である。図21(50-2)は成田山新勝寺の本尊である不動明王、図22(38-2)は熊谷市野原文殊寺の本尊、文殊菩薩の守札である。

図21 (50-2)

図22 (38-2)

③御影
御影とは肖像の尊敬語である。口絵「天台寺院の守札」に市内真福寺(石戸両大師)の慈恵大師御影を示した。同寺ではこの御影とともに豆(魔滅)大師と角大師の守札を組みとしており興味をひく。鈴木家には慈恵大師御影の守札が一四枚ある。
④宝印・種子
これは宝印のモチーフや種子を表記したものである。宝印は社寺で頒布する守札や納経帳などに押印する宝珠形の印のことで、本尊を表す種子や真言などを組み合せて図案化した独特の印字である。
種子とは密教で仏や菩薩を意味する梵字をさすが、種子の独特な字形は神秘的であり、それゆえに呪力のあるものと期待され、守札に採用されたのであろう。種子のみの守札は少なく、図像や真言などと併記されたものが多い。種子と宝印の守札は一ニ点あり、ここでは二例を提示する。図23 (44—13)は御嶽山発行の金峯山寶、図24(H228) の発行社寺は不明であるが、梵字主体の家内安全の祈祷札である。最上部の梵字は  梵   字 (カーンマン)と不動明王の種子で、以下に不動真言を配する。

図23 (44-13)

図24 (H228)

⑤その他

図25 (44-14)

①~④以外のものは「その他」として扱った。図25(44—14)は真神の守札である。真神は狼の古名でお犬様とも呼ばれ、眷属神としてあがめられていた。鈴木家には真神の守札として三峯山の四点、御嶽山の三点がある。
なお、かって山の食物連鎖の頂点は狼で、狼の存在が自然のバランスを保っていた。鹿や猪が過多になれば人界山里に降りてきて作物を荒らすことになるため、古人は狼を真神とあがめたのであろう。

<< 前のページに戻る