北本市史 通史編 近代
第1章 近代化の進行と北本
第2節 地租改正の実施と村財政
1 地券の発行
壬申地券壬申地券は、土地所有権の確定作業いわゆる「地券名請」に手間取り、地券の交付が大幅に遅れていた。「一地一主」の方針のもとで、複雑に入り組んだ所有関係を明確にするには、当時の帳簿類による調査ではあまりにも現状にそぐわず、頼りない結果しか得られなかったのである。当然、大々的な土地調査事業が実施される必要性が生じていた。
実際に「埼玉県でも、『質地、質流地の所有権』をいかに決定するかの問題が生じており」(『県史通史編五』P一五三)というように一筋縄ではいかない様々な問題をかかえ、地券の交付は遅々として進まなかった。このことは壬申地券が「旧埼玉県では、『上尾百年史』P六三の記述にみられるように、現上尾市域ではただ一枚発見されたにすぎず」(前掲)という状況が示すように、「埼玉県における地租改正は、壬申地券段階の調査蓄積を利用することなく、八年三月以降、その第一歩から調査が開始されることとなった。」(前掲)のである。従って、壬申地券は過渡的な存在として、地租改正へとつながっていく。