北本市史 通史編 近代
第2章 地方体制の確立と地域社会
第4節 地域の生活・文化の動向
2 日清・日露戦争従軍の郷土兵
明治二十七年(一八九四)八月に始まった日清戦争は、近代化をめざす我が国が初めて体験した本格的対外戦争であった。我が国はこの戦いに勝利して、対外的には朝鮮支配と中国に対し圧迫の優位に立ち、国威を拡大して帝国主義列強の仲間入りを果たした。また国内では莫大な戦時利得をもとに産業資本主義を発逹させ、政治・経済・軍事の面で帝国主義化が進められた。この十年後の同三十七年五月、列強の一つロシアとの間に日露戦争が起こった。日清戦争の勝利によって朝鮮支配を強固にしようとした我が国に対し、三国干渉の圧力後、極東への進出を図り、満州支配を拡大しようとしたロシアが、我が国の朝鮮進出を脅かしたのである。この戦いも小国日本が大国ロシアに辛くも勝利し、我国の朝鮮支配と満州進出の権益をロシアに認めさせた。アジアの植民地の諸国は、アジア人のヨーロッパに対する初めての勝利とうけとめ、彼らの独立運動を勇気づける契機となった。我が国においても〃アジアの盟主〃としての自覚が高まり、特に在満権益の擁護を目的として軍事強化の道を歩むことになる。このように両戦争が、我が国の歴史に与えた影響には計り知れぬものがあるが、同時にこれは国民に多大の苦しみを与えた。この両戦争については、第一節の三「日清戦争と日露戦争」で、開戦の経緯、戦局の推移とその意義について触れておいたので、ここでは両戦争が郷土の人々のくらしにどのような影響を与えたかについて述べることにする。