北本市史 通史編 近代

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第4章 十五年戦争下の村とくらし

第4節 十五年戦争下の生活と文化

5 戦時下の人々のくらし

部落会の活動
大政翼賛(よくさん)会は昭和十五年十月成立後、ただちに地方組織整備拡充計画を立てて、全国に組織網を整備していった。しかし、地方組織ははじめ埼玉県支部以下郡市町村支部を設置するにとどまり、実際には従来から地域社会で隣保団体として存在した町内会、部落会の再編成によってなされた。この市町村常会・町内常会・部落会とその下部組織である隣保班・隣組が、「上意下達、下情上通」の組織として翼賛運動の実践の中核として期待された。この市町村常会・町内常会・部落常会はすでに昭和十二年の国民精神総動員運動の実践綱目として組織され、銃後後援、生産力増強・貯蓄奨励等の重要国策周知・協力実践のため大いに利用された。しかし、昭和十五年七月第二次近衛内閣が成立すると、この運動にも終止符がうたれ、大政翼賛会の発足に伴って新体制運動にひきつがれた。この中で政府は運動の一層の推進をはかって、相互監視を一つの目的とした江戸時代の五人組に相当する隣組による連帯組織を編成強化するために、昭和十五年九月、町内会・部落会整備要綱を発し、当時盛り上がって来た新体制運動を直接内務省が吸収し、県市町村を戦争遂行体制の中に組み込んでいった。
石戸村では同十五年に石戸村常会が結成された。その規約には、次に示す四目標を実現して「大政翼賛(よくさん)の臣道を完(まっと)うすること」が明示されている。
 第一に、隣保(りんぽ)団結によって地域住民が翼賛の本旨(ほんし)を地方共同の任務とすること
 第二に、区域内住民の道徳的錬成と精神的団結をはかること
 第三に、戦争遂行という国策をあまねく住民に透徹させ、そのための諸施策に住民がすすんで協力すること
 第四に、戦争の長期化に伴って国民生活のための物資が不足して来たため、統制経済を行うための統制単位としての役割を部落会が果すこと

このような目標を達成するため、既成のあらゆる社会組織が動員された。以下列挙すると、村役場をはじめとして、部落会・農会・信用組合・養蚕組合・村会議員・小学校教員・警防団・軍人分会・教育会・愛国婦人会・国防婦人会・男女青年団・常務方面委員等であって、まさに地域住民の日常生活の細部にわたって戦争遂行のための全体主義的施策がとられたといえよう。
表75でもわかるように、石戸村では一五の部落会が結成され、さらに約五戸から一〇戸の隣組が組織され、上意下達の徹底がはかられた。
表75 部落常会開催日割表
部 落 名会 長 名区 域戸 数隣 組 数常 会 開 催 日 時常会開催場所
第一部落会中村 伊三郎ニッ家二五毎月十五日午後一時稲荷神社
第二部落会柳瀬 德太郎下久保・台原四四毎月二日午後六時会 長 宅
第三部落会滝澤 十郎下原・上原五五毎月三日午後三時原組公会堂
第四部落会岡村 新平上手(勝林ヲ含厶) 北原八〇一四毎月四日午後七時真 福 寺
第五部落会峯尾 金之助九丁一七毎月五日午後七時会 長 宅
第六部落会ー高松 礒八堀ノ内四九毎月六日午後七時堀ノ内公会堂
第七部落会小倉 良朔上宿・下宿七〇毎月七日午後七時放 光 寺
第八部落会横田 市平横田・荒久保五二毎月八日午後七時薬 師 堂
第九部落会深井 平上ノ南・荒井ノ南・城中四四毎月九日午後七時亜(ママ) 観 堂
第十部落会新井 忠相馬場・東原・上手九三毎月十日午後一時小学校講堂
第十一部落会谷ロ 幸三郎宮岡四〇毎月十一日午後七時元石戸村共繭組合集荷所
第十二部落会田島 忠夫河岸三三毎月十二日午後六時阿弥陀堂
第十三部落会栗山 泰助烏ノ木・丸山四四掘月十三日午後七時会 長 宅
第十四部落会斉藤 源太郎北袋四〇毎月二十五日午後七時北袋神社
第十五部落会新井 光彌前谷足・中谷足・後谷足五九毎月十四日午後七時会 長 宅

(高松木一郎家 30)


石戸村の部落会の活動内容は、その規約によると次のように決められている。すなわち、部落会は村長の統括(とうかつ)を受けて区域内各種団体と緊密(きんみつ)な連絡を取って次の任務を遂行すること。一、経済・産業・教化に関する事項 二、警防・保健・衛生に関する事項 三、社会施設に関する事項 四、時局下における必要物資の増産供出配給及び消費規正・に関する事項 五、其の他共同生活に関連する各般の事項
このようにして、部落会、町内会、隣組は翼賛(よくさん)体制実行の強力な地盤となった。しかし、なお時局認識に欠ける面があるとみたのか、翼賛会県支部では自治体に県民練成の指導委員会の設置を求めた。

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