北本市史 資料編 現代
第2章 北本の農業
第7節 都市化と農業
昭和三十四年(一九五九)後半に始まる高度経済成長は、農業経営の近代化を促進する重要な契機となるが、反面、都市化の進展をとおして、農地の潰廃を激化させ、農業の後退をひきおこす直接的な原因となった。首都近郊に立地する北本の場合も、昭和三十年代後半になると、激しい都市化の波に洗われるようになる。首都近郊農村における都市化は、大まかにいって、主要国鉄沿線ならびに、首都西郊の私鉄沿線を中心に住宅地域化の様相を強め、首都北郊ならびに東郊では、工業地域化の特色をやや強く示しながら展開していった。
北本におけるこの時期の都市化は、土地利用面からみる限り、住宅化と工業化の中間的性格をもっていたといえる(資料91)。
都市化つまり農地の都市的利用への転換を、都市化の転用初期を例にくわしくとらえたものが、資料90である。
資料に記載の農地法第四条とは、所有権の移転(売買)を伴わない農地の転用を、また第五条は、所有権の移転を伴う農地の転用を示す条項である。
第四・五条のうち都市化の始まる初期から中期段階に第五条転用が卓越し、中期から終期にかけて第四条転用が多くなる。いいかえれば、都市化の初期段階には農地を売却するケースが目立つが、終期に近づくにつれ、残り少ない農地を転用して、そこに貸倉庫、貸店舗、貸家等を建て、不動産収入で生計の維持を図る農家の増加を示している。
第三条は農地の転用を伴わない農家間での所有権の移動に関する条項で、一般には都市化地域、とくに第五条扱い地域とその外縁部にみられる。いわゆる代替地買いであることが多い。
第二〇条は農地の貸借権解除を扱う条項で、都市化地域の外側にやや多くみられる。都市化による地価高騰が始まる前に、小作地を引き上げておこうという意図の現われである。
資料92は、市街化区域内の農地を都市環境的観点から保全し、かつそこで都市農業を営んでいる農家を保護しようとする条例である。この条例は、国の住宅政策と地方自治体の都市行政との接点につくられたものであるが、どちらの側面からみても問題をはらんだ施策内容である。