北本市史 資料編 現代

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第3章 工場の誘致と工業発展

第1節 工場誘致と工場適地

100 昭和三十六(一九六一)年十一月 北本町の工場誘致実績
  (『埼玉新聞』昭三六・一一 ・二五』)
   伸びゆく北本町の工場誘致 その一
    六万都市の実現へ
    「京埼工業地帯」の中核
去る三十四年十一月三日に町制を施行した北足立郡北本町は最近工場誘致が活発化し、ー万五千町民の新らしい街造りがようやく軌道に乗った感じだ。これまでに誘致した工場は東菱鋳造・内外金属・可鍛鋳鉄・三倉精機・太田鉄工・栗田電機・十条電機・日本蛭石・柳井製作・外山製作・三和製鋼・根岸製作の十二工場にのぼりすでに操業を開始しているところもある。とくにこんど正式決定をみた三菱工場は日米両国の技術提携による新会社で日本でもトップクラス。すでに建設用地三十五万平方㍍の買収もほぼ完了し近く工事に着手する予定である。この工場が完成すると同町の税収は一億五千万円と見込まれるため町当局のバックアップも大変なものだ。こうした事態の推移にたいし町当局も将来の推定人口を六万人とふみ、目下都市計画事業を実施中だが、ゆくゆくは「京埼工業地帯」の中核体になるだろうとして鉄筋三階建、冷暖房つきの役場庁舎の新築を計画、すでに用地五千平方㍍の買収も終え、来年十一月完成のみこみで近く工事に着手する予定である。そこで工場誘致にわく北本町の現情(状)をまとめてみた。
  すでに十二工場誘致「三菱」の土地買収も確定
北本町は昭和三十四年十一月町制を施行以来、約二年驚異的の躍進を続け、行財政の面においても県南都市とならび着実な歩みをつづけている。かつて農村都市としての北本町も最近つぎつぎと工場の誘致に成功、現在その数十ニ工場、重工業、軽工業或は精密機械工業と各部門の工場の進出をみ、既にその殆んどが操業を開始している。
このため町の様相も大きく変貌、工業都市として急速に脱皮しつつある。さらに十七号国道バイパス線が本年度中に完成しょうとしており、これが完成の暁にはますます工業都市化に拍車をかける結果となる。町としてもこれに対処するため目下鋭意道路の整備や都市計画の実施など変転する行政に追いかけられる状態で町を通じ、活気に満ちている。これは第一に町全体の平和であり町民が執行者に協力する体制とその熱意である。その現れとして九十八%を越える納税成績はますます財政を強靱にして年度毎に相当額の黒字を生じ、地方公共団体共通の悩みである教育施設の点においても本年中学校々舎の増築を終えた。さらに今回三菱工場の誘致がほぼ確定し地主の調印を終る段階であり、この三菱工場は三菱各社とアメリカ資本ならびに日米両国の技術提携による新設会社で恐らく国際的超一流工場である。工場用地三十五万平方が余の広大のもので国鉄沿線と十七号国道沿線という立地条件を具備し、恐らく県下随一の地点といっても過言ではない。加えて投下資本一〇〇億、既に工場設立計画も終り地主との契約完了次第直に着工する。この工場が完成すると昭和四十年の同町の税収推定額は一億五千万円の見込みであり、新に北本町は紀元を画する一大変化をもたらすこと必須である。現在の北本町はその面積一九・六三平方キロ、まだまだ工場進出の余地もあり人口増加を受け入れられる弾力性に富んでいる。こうした恵まれた立地条件をフルに活用し、町民が混然一体となり町の発展を期する北本町は、十年を期せずして人口五万の市制施行も夢にあらず、その躍進が期待されている。
   役場庁舎も新築 来年十一月完成の見込み
木村町長の話 わが北本町はすべての立地条件に恵まれ通勤五〇キロ以内という強味もあり、現在施行しつつある京埼工業地帯形成の中核として新らしい工業都市の建設に努力を続けている。今後の町政のあり方等十分研究の結果、財政的の見通しもついたので、議会の了解もえ、町民ひとしく待望の役場庁舎を中学校の南側に建築する計画をたて、既に用地、五、〇〇〇平方㍍の買収も終り、来年十一月を竣工の目途に近日中に着手する考えで「明るい町は役場から」とは私の常に変らない信念である。町に奉仕する者、平素この心掛けを望んでいる町の象徴としての役場舎を完成し、まず面目を一新、役場を中心として町民が一致団結してこそ始めて町の繁栄、前進も期し得るものと信ずる。
   近い将来市制施行
     三菱誘致 喜びにたえない
伊藤助役談 今回誘致確実となった三菱新設工場の北本町進出は誠に喜びに堪えない。工場の誘致は公共団体の経済的の基盤確立には最も重要な要素であって、如何なる市町村といえども財源の裏付けなくしてはその発展は期し得られない。この際でき得る限りの助力を惜しまない。成長を続ける北本町が、更に巨大な三菱工場の誘致ができることは天祐なりと信ずる

誘致工場一覧


日本蛭石株式会社(大字東間) 蛭石の焼成加工
株式会社柳井製作所(大字東間) 通風乾燥機製造
株式会社外山製作所(大字東間) 教材楽器
株式会社三和製鋼所(大字東間) 鉄鋼の圧延
株式会社根岸製作所(大字北中丸)ビニール製品
東菱鋳造株式会社(大字古市場)鋳造及び自動車部品
内外金属工業所(大字東間) 時計バンド製造
可鍛鋳鉄株式会社(大字宮内)車輌エンジン部品製造
三倉精機製作所(大字東間)精密工具製造加工
株式会社太田鉄工所(大字下石戸下)
 二四インチ電動機直結型及び段車型削機製造
十条電気株式会社(大字高尾)電気器具製造
株式会社栗田電機製作所(大字下石戸上)
 換気扇送排機・単相誘導発動機等の製造
エルマン株式会社(大字高尾)
 エルマンテレビ受像機・エルマン強力ステレオ装置・エルマントランシーバ等の製造
三菱新工場(大字下石戸下)
 農村都市から脱皮高邁な理想で町づくり
大島町議会議長談 北本町の工場誘致状況を見ると関係地主の熱意と協力がなくては実現できない。これはわが北本町のみでなく、恐らく各市町村の共通点だと思う。わが北本町が急速に工業誘致に成功したことは交通至便ということゝ、山林地帯が非常に多くかつそれが国鉄沿線であり、国道十七号線に沿っておったという立地的に見て好条件であったことである。加えて東京都へ近く 一時間以内で通勤可能であるという点だろうと思う。一面考えれば今後の町づくりには従来の観念とは相当異った視野に立って高邁な理想を基調とせねばならない。卒直にいうと農村都市を脱皮することである。

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